ヨモジジ(freaks ver.)

本と雑貨と音楽と、街歩きが好きなオッサン。1981年生まれの珈琲難民が好き放題に語る。レビューのためのブログ。

『ワールド・カフェをやろう!』著:香取一昭、大川恒

ワールド・カフェというのは 多人数型のワークショップに近いミーティング形式のことです。ミーティングの参加人数が多い場合に 意見が偏ってしまったり、 参加者のコミットメントが下がることに 課題感を感じることがあると思います。ワールド・カフェは テ…

『春宵十話』著:岡潔

数学者の書く数学の本は読めないのだから こういった本を読むことになる。だいぶ戦前の道徳的すぎるところが 鼻についてしまうけれど、 真理に向かおうとする時の進み方は特徴的で面白い。コツコツした積み上げよりも ハーモニーに近い捉え方で証明を得よう…

『アタリ文明論講義』著:ジャック・アタリ 訳:林昌宏

ちょっとタイトルとの齟齬がよろしくない。文明論についての話ではなくて、 未来予測の意義と方法論を説くものだと読んだ。そういうものとして読めば別に良いのだけれど 文明についての、ここの評価はないし、 未来予測を使って文明を考えるというようなこと…

『1兆ドルコーチ』著:エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アランイーグル 訳:櫻井祐子

ビジネス書と評伝のあいのこのような本だ。しかし、この書き方になったのは このビルという「コーチ」が行動そのものよりも 人格に特徴があるということを意識してのことかもしれない。それは余計に原理原則というような 無機質なものに抽出することもできた…

『モードの迷宮』著:鷲田清一

これはファッション誌「マリ・クレール」に掲載されたコラムを集めた小論集だが、 そのスタイルは襞の入り組んだ陰影に着目する彼にはちょうど良いかもしれない。境界は動きとともにある。 完全に固定化された境界はただの図像であり、写真だ。 哲学者の鷲田…

『技術の街道をゆく』著:畑村洋太郎

書名のとおり、技術の現場を巡りながら 技術がいかにして受け継がれ、かつ変容してきたかということを見せてくれるエッセイだ。ただ、正直に言うと話のネタはそれぞれ面白いのだが 本の全体の方向性はあまりうまく作れなかったのではないだろうか。 おそらく…

『ケンブリッジ・サーカス』著:柴田元幸

言わずと知れた英米文学翻訳者の柴田さんである。 旅のエッセイなどと帯に書いてあるけれど、しかし旅にしては未知のものが少なすぎる。 これは彼の仕事場の通勤物語だろう。とはいえ、人の仕事場はいつも企業秘密とやらで なかなか見えるものではないから、…

「ヴォイニッチホテル」著:道満晴明

短編を主戦場とする著者の珍しい3巻にわたる長編。設定の盛り込み密度は常にマシマシ。 包むつもりもない風呂敷で 人が楽しくホラ話をする感覚だと、こんなものかもしれない。 (チャック=ノリスの挿話なんて特に必要だったろうか?)孤島にあるホテルを舞…

「ねじの回転」著:ヘンリー・ジェイムス 訳:蕗沢忠枝

ちょっとしたホラー小説というところなんだけれど、 まったくうまく噛み合わなかった。その「恐ろしいもの」を直接に描かないことで恐怖を与えるという書き振りなのはわかる。 しかし、書かれていないものの恐怖はリアクションだけで伝わるかというとそうで…

『断片的なものの社会学』著:岸政彦

単純に美しいエッセイ集として読んでも差し支えない。 ここには破調があるけれど、それらは選ばれており、 選ぶことは美に接近することだ。写真は撮影技術以上に編集力がものをいうと僕は思っている。 どのように並べるか、引き延ばすのか、切り取るのか。 …

『交渉術の基本』著:グロービズ

交渉というとずる賢く立ち回るような印象もあるが 本書は交渉をもっとよいものとしてとらえている。そもそも交渉が発生するのは情報が非対称である時でしかない。 つまり、互いに相手がどういう状況で何を求めているかの情報が完全に共有されている時、 それ…

『西欧の東』著:ミロスラフ・ペンコフ 訳:藤井光

原題は "East of the West"という シンプルに人を惑わせるような語彙だ。東欧の作家には苦しい状況を反映したものが多いが、 彼は確かにそれが反映されたうえで、 もう一歩抽象化されたモチーフを扱っているように思う。多様なパーソナリティ、複数のオリジ…

『異文化理解力』著:エリン・メイヤー 訳:樋口武志

副題に「ビジネスパーソン必須の教養」とあるけれど、 これの意味するところはこれが実用書であるということだ。なので、繊細な各文化の記述を期待してはいけない。 あくまで、どのような形でギャップに足をとられることがありうるか、 ということをまとめた…

『パタゴニア』著:ブルース・チャトウィン 訳:芹沢 真理子

祖母の家に飾られた恐竜の皮から話ははじまる。それがあったと言われる南米のパタゴニアへと旅は進んでいくのだが、 なぜか話はすぐにそれていく。 無数のならずものたちが大西洋を渡り、南米で暴れまわっていた。足跡は重ね合わされて、地理と時代は互いに…

『重力と恩寵』著:シモーヌ・ヴェイユ 訳:田辺保

重力とは悪しき惰性のことであり、 恩寵は神から求められることなく与えられる奇跡のことだ。思想家というよりは はっきりとキリスト教に近い神学の特性を持っている。 しかし、彼女はキリスト教者ではない。 ユダヤ人の左派闘士であるという肩書すらついて…

『メルケルと右傾化するドイツ』著:三好範英

メルケルは確かに希有な人物だ。 しかし、歴史は適した人間を連れてくるのであって、 メルケルでなくても、同じような人物がドイツに現れたに違いない。筆者の筆致も彼女の特性を抑制的に描いている。ここでバランスをとるように現れているのは 「右傾化する…

『トリエステの亡霊』著:ジョーゼフ・ケアリー 訳:鈴木昭裕

須賀敦子の「トリエステの坂道」以外にこの場所について何も知らなかった。 須賀の作品では詩人のサーバがいた、というくらいしか覚えがなかったのだが、 「サーバ、ジョイス、ズヴェーヴォ」というサブタイトルの並びでなんとなく手に取った。今なら聖地巡…

『会議 〜 チームで考える「アイデア会議」 〜』著:加藤昌治

アイデア出し会議というのは定型化しにくいものであり、 それゆえに価値の高い工程になりやすい。著者は博報堂の社員として実際にこうしたアイデアを手掛けていた人で ここに書かれているものはどれも分かりやすく 行動に移しやすいものが多く選ばれている。…

「チョンキョンマンションのボスは知っている」著:小川さやか

中国は重慶、香港そこにアフリカ人のコミュニティ があるというだけで興味はそそられる。とりわけ、アフリカのイメージというのは茫漠としているし、 帯にはタンザニアと書いてあるが、 タンザニアがアフリカのどのあたりかというのも分かっていなかったりす…

「密林の語り部」著:バルガス=リョサ 訳:西村英一郎

ペルーのある部族にまつわる伝承を 現代の都市部の人間が語る二重の語りの構造が特徴的な物語だ。考えようによっては「語り部」の伝承であるから 三重になっているとも言えるかもしれない。南米の物語と言えばマジックリアリズムのようなものを期待するが、 …

「HOSONO百景」 著:細野晴臣

はっぴいえんど、YMOのメンバーであり、 ソロとしても幅の広い活動を見せる細野のエッセイである。坂本も似たようなところがあるが、 音楽に対する博物学的な好奇心が強い。 つまり、ある土地の、ある時代の音を求める。坂本とのスタンスはその距離感か。 細…

「ギケイキ 千年の流転」著:町田康

ギケイキとは義経記、源義経のお話ですね。 今回読んだのは最初の巻でまだ続きがあるようでしたが 会話のテンポもよく、楽しめました。町田康らしいめちゃくちゃさが、 当時の野武士たちのイメージとこれほど親和性が高いとは。 というか、町田康は野武士な…

「ラインズ」著:ティム・インゴルド 訳:工藤晋

楽しく、発見に満ちた本であると思う。線の文化史ということだが、多種多様なラインが紹介されている。 地図のライン、建築のライン、物語のストーリーライン、裁縫のライン、旋律のラインなどなど。洋の東西を問わずに並べられていくが、 手振り身振りその…

「ガザに地下鉄が走る日」著:岡真理

世界中ニュースに溢れている。酷いこともたくさん起こる。 ガザはその中でも長きにわたって苦境を強いられている場所のひとつだろう。著者は繰り返し現地に赴き、 そのたびごとに人と触れ合い、 隣人として苦難から目をそらさないようにする。しかしながら、…

「経理高速化のための7つのITツール活用戦略」著:古旗淳一

ITツールと言っても高価なシステムを導入しろという話ではなくて 当たり前にある環境の使い方、考え方の紹介である。とはいえ、そもそもコンピューターの使用自体が それほど浸透から時間の経っていないもので、 使用者に対するリテラシーの要求水準がばらつ…

「正確な決算を早くラクに実現する経理の技30」著:中尾篤史

経理という仕事は、コストセンターと呼ばれてしまうが、 それ故に非効率が気づかれないまま放置されてしまうことが恐らくある。そういう点で、何に気をつけて点検するべきか教えてくれる本である。 驚くような技があるわけではない。 そりゃそうだよな、とい…

「服従」著:ミシェル・ウェルベック

小説はフィクションでも、フィクションだからこそ 単に人がそう思っているだけのことを書いてしまえる。 シャルリエブド、同時多発テロ、黄色いベスト、 一体全体フランスでは何が起こっているのか。 そんな興味で本書を手に取った。主人公は大学の教授で文…

「現代社会はどこに向かうか」著:見田宗介

見田宗介は社会学専攻の一部のタイプに人気がある。 宮台真司よりは文化人類学的で、 中沢新一より計量データをきちんと扱う。まぁ、僕の好きな先生です。 その新刊なんですが、これは少し物足りなさを感じる。内容としてはサブタイトル(省略してしまってま…

「会社法入門」著:神田秀樹

会社法というのは商法から派生して現れた 比較的新しい法律のようだ。これは会社というものの存在感の増大に加えて 株式市場の整備という側面がある。 本書は入門ということなので、 法人という概念の説明から丁寧にやってくれている。なので、会社法の必然…

「台湾生まれ 日本語育ち」著:温又柔

クレオール文学というものがあって、 あのエキゾチックが内包された、 悲しみと楽観のマーブル模様を楽しみつつも遠くに感じていた。ただ、この温又柔のエッセイはまぎれもなく 日本にもクレオールと同じものが存在しているということを 優しげに提示してい…