ヨモジジ(freaks ver.)

本と雑貨と音楽と、街歩きが好きなオッサン。1981年生まれの珈琲難民が好き放題に語る。レビューのためのブログ。

読書

「数学する身体」著:森田真生

数学が何かというよりは 数学とはどこにあるのかという問いに近い本。全体的に論旨はやわらかく、妥当なところだとは思うけれど 正直に言って小林秀雄賞という名前からあの人の圧力をイメージすると物足りない。 (ま、本人は別にそれに寄せるつもりもないん…

「記憶の未来」著:フェルナン・ドュモン

「記憶」と「未来」とはいかにも奇妙な取り合わせである。 しかし、これ以上に今焦点化されるべき問題もあるだろうか。「物語の共同体」以降、標準の言語、教育は焦点化されて それらがネーションを作っていること自体は明らかになっているが 無論、それは善…

「マーシェンカ/キング、クイーン、ジャック」著:ナボコフ

素晴らしい装丁でナボコフコレクションが出ていたので つい買ってしまった。以下ではさくっと6割くらいネタバレしますが、 話の筋は焼き鳥の串のようなもので味わうべきは串ではないです。 とはいえ、読む楽しみが失われるようなネタバレは避けているつもり…

「ベルルスコーニの時代」著:村上信一郎

派手派手しいスキャンダルまみれになって退場した人、 そんな程度の印象でベルルスコーニのことを覚えていた。しかし、そもそもどうやってそんな乱痴気騒ぎをするような人が 大統領になったりしたのか。本書はベルルスコーニを通してその時代の イタリア政治…

「親鸞」著:野間 宏

浄土真宗の開祖である親鸞を語ろうとしているようであるが、 どうも、当時の社会的な要請から親鸞で語ろうとした本のようである。1973年という出版年は政治の時代であったと思う。 とは言っても、それによって歪められた骨子はなく 単に細い道を歩くだけの本…

「森へ行きましょう」著:川上弘美

別の生き方があったかもしれないと考えることは誰にでもあるだろう。 それは選択の結果とかそういうのではなくて、 ただ単に別様に生まれて、伴走しているのかもしれない。この小説は互いに互いの伴走者として1966年の誕生から 2027年の60歳までの愛の物語と…

「ハイファに戻って/太陽の男たち」著:ガッサーン・カナファーニー 訳:黒田寿郎/奴田原睦明

短編がいくつか入っているが、 やはり「ハイファ」が一番小説としてよくできている。 小説的フィクションを強度に転換することが巧みに行われている。そう思うのは要するにほかの短編が ざらりとしたナマの感触のまま突き出されているように感じるからだ。特…

「セカンドハンドの時代」著:スヴェトラーナ・アレクシェーヴィチ 訳:松本妙子

ソ連からロシアへの移り変わり。 国家の崩壊と誕生を生き延びた人々へのインタビューから本書は成り立っている。貴重にしても、ありふれた題材ではある。 国家による抑圧と解放、偽りの国民概念。 実際、本書もその領野からの声をひろっている。ただ、もっと…

「声と現象」著:ジャック・デリダ

さすがにしんどいので寝かせながら読んでた。フッサールをデリダが読み解くという体ではあるものの、 それは解くのではなく、 フッサールの紡いだ糸をさらに編み込んで行くような身振りでもある。現象学的な振る舞いに基づいて還元しながらも 不可分な二重性…

「『その日暮らし』の人類学」著:小川さやか

アフリカから中国への出稼ぎ市場というものがあるとは知らなかった。 文化人類学者としてどっぷり入り込みながらの フィールドワークレポートである。資本主義は流動性を求めていくものだが、 その極限的な姿の一つとしてこの本のキーワード「その日暮らし」…

「消費大陸アジア」著:川端基夫

アジアと言っても様々な国がありそれぞれに流行り廃りがある。 本書はアジア各国へ進出した企業の成功と失敗の事例を見ながら それをどのように捉えるかという視点を提供してくれる。内容としては悪くないんだが、 少々、アカデミズム内の術語についての解説…

「異邦の香り」著:野崎歓

これ、ネットレビューとしてはどうかと思いますが、 装丁がとてもよろしくてですね、開く前から乳香の香りがするような作りなんですよ。 (嗅いだことないけど)土煙と甘やかさを感じさせる象牙色の表紙に金箔押しの優美な英字、 端正なタイトル、ついで(失…

「パロール・ドネ」著:クロード・レヴィ=ストロース、訳:中沢新一

構造主義の発展を支えた人類学者の講義録である。ここにある内容は正直に言って僕には専門的すぎて もう少し周辺テキストを読まなければ理解をしきるのは難しかった。しかし、それは言葉を弄するといった類のものではない。 どれも具体的な物事に結びついた…

「低予算でもなぜ強い?」著:戸塚啓

ベルマーレはJリーグが始まった時に「ベルマーレ平塚」という名前だったが 気づけば「湘南ベルマーレ」と名前を変えていた。色々大変なんだろうと思ったが、この色々がなんなのかはよく考えずにいた。 別に何かのマンガの引きでもないので、それが自分の生活…

「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」著:新井紀子

シンギュラリティはこないけど、 全体的に2段階下くらいの水準で人類はAIに追いやられるという話。どれくらい教科書が読めないのかというのは 割と衝撃的な数値が出ていますが、 ここの間違え方はAIと違うようにできている気がします。相手の言いたいことを…

「都市は人なり」著:Chim↑Pom

やってやった、という手応えだけがある。 面白い本だ。美しさよりも、もひとつ前の、面白がることに彼らはフォーカスしてる。 人が集まりより多く面白がられるその煌めきが 美しくあるのかもしれず、そのようなものであれば 僕らの日常も十分に美しいのであ…

「武器としての会計思考力」著:矢部謙介

会計を専門にしてない人でも道具として使えるような なかなかよいガイドだと思う。語句の説明の丁寧さもさることながら 実際の財務諸表を業種ごとに見ながら それが何を意味するのか、実践的に解説もしてくれる。最終的にKPIへの落とし込みの話までしている…

「求心力」著:平尾誠二

こちらの本はあまりオススメできない。 「勝者のシステム」のときにあくまで体験から帰納的に話をすすめていたのが 先に答えを持ったところから書いてしまっている。そしてその答え合わせにこのような経験があった、というが それは順番が逆なのだ。ただ、集…

「スペクタクルの社会」著:ギー・ドゥボール 訳:木下 誠

戦うために戦う文章の連なりであり、 現象のまま、道連れに消え去ろうとする試みだ。脱構築へと連なる流れの実践的な潮流がここにはありそうだ。 消費的なシュミラークルのお話かと思うと、それよりも より広い視野のある本ではある。ただ、戦う衝動が強すぎ…

「理不尽な進化」著:吉川浩満

これは進化論についての本ではありません。 科学と一般的な理解との隔たりについて丁寧に書かれたものです。と、言ってしまうには進化論についての言及はしっかりしている。 この具体的なコミットメントがあってこそ、この人の立論は意味を成すのだから 当然…

「ゴリオ爺さん」著:バルザック

パリの下宿にやってきた田舎青年が社交界でもまれる変則めぞん一刻です。まぁ、しかしあれよりだいぶ下世話か。 泣き落としにつぐ泣き落としがあらわれるけれども みんなだいたい自分勝手すぎる。自分のこづかいが少ないからと言って カジノで儲けてきてと頼…

「新しい中世」著:田中明彦

世界システム論というのは大仰でやや胡散臭い。 しかし、その印象を超えて説得力のある論を展開してくれた。何より本書の初出は1996年で20年も前であるにも関わらず 今もその射程が先を照らしているというのが力強い。ここで想定されている「新しい中世」の…

「勝者のシステム」著:平尾誠二

ラグビーの日本代表の選手であり、監督であった人だが、 個人的に言えば僕の母校の数少ない事前イメージを伝えてくれた人だ。僕が大学に入った時には特に強かったわけではないので 余計に「平尾誠二」という個人が際立って強かったのだろうと思う。2016年に…

「人を操る禁断の文章術」著:DaiGo

正直メンタリズムは胡散臭い。 読み終わっても胡散臭いのは変わらない。それでも、これほど実戦的で簡潔にまとめられたものは 中々お目にかかれないのではないかと思う。実戦的というのは、書くために書く仕事をしているのではなくて 仕事の中で手段として文…

「人類学者への道」著:川田順造

人類学というのは今ではあまり使わない名称かも知れない。 未開の土地を文明の視点から見るという、権力関係が露骨であるから。 今では比較文化論などの名称のほうがポリティカリィコレクトなのだ。この人もまた、1934年生まれである。 しかし、視線は遠く研…

「残夢整理」著:多田富雄

1934年生まれ、2010年没。 青年期に戦後を過ごして来たそうした人のエッセイである。右派ではないが、日本は確かに 敗戦を経て接ぎ木をされたというのはある。 どのように切断されて、なにが残ったのか 今からでは見えないものも多い。それにしても、感傷的…

「フィリピン」著:井出穣治

ドゥアルテ大統領で悪目立ちをしてしまった感はあるものの しかし、どのような道行を経てそこに来たか知らない人は多いだろう。この本はASEANの中での差異も取り上げながら、 簡潔にスペイン植民地時代から歴史も抑えてあり、 概要をとらえるのにとてもよく…

「現代美術コレクター」著:高橋龍太郎

なんか、この人ナチュラルにマウンティングしてきて厄介なんですけど。ただ、マーケットとして成熟を極めていなくても 多様な広がり方をしていて、何がどう動いているのか なかなか見えてこない現代日本アートの切り口として 筆者が提示しているものには説得…

「ビッグデータと人工知能」著:西垣 通

この人はITなどという言葉で呼ばれる前から この業界にいる人ですが、正直、僕には全然合わない。AIの知性というものに限界があるのだから、 万能であるかのように思ってはいけない、 という主張それ自体は受け入れましょう。というよりも、それはむしろ当た…

「アホウドリを追った日本人」著:平岡昭利

副題には一獲千金の夢と南洋進出とある。アホウドリが儲かるとは、どういうことか。 なんでもアホウドリは警戒心が弱いので特別な道具が無くても ひたすら撲殺で捕まえられるらしく、それによって羽毛を輸出していたらしい。明治の初頭から羽毛の輸出はそれ…