ヨモジジ(freaks ver.)

本と雑貨と音楽と、街歩きが好きなオッサン。1981年生まれの珈琲難民が好き放題に語る。レビューのためのブログ。

読書

「蠅の王」著:W・ゴールディング

無人島に不時着した少年たちの サバイバル・サスペンスといった趣。バトルロイヤルものの原型としての 形式的が感じられてそれ自体興味深くもある。 あからさまに敵対しそうなやつがきっちり敵対して、 あわれな犠牲者は最初の予感に違わずおまえなのか、と…

「その姿の消し方」著:堀江敏幸

言わずと知れた文学ジャンキーの堀江くんです。 文学の在りように対して向き合おうとする姿勢はザ純文学でしょう。今回は偶然目にした絵はがきの詩篇から フランスで物語が動きます。 詩は何度も読み返すものですから、 その度ごとにニュアンスを変えた読み…

「職業としての小説家」著:村上春樹

出たのは少し前かとは思いますが すでに功なり名を遂げた人物の ありがたいお言葉集ですよね。それは避けられない。 こんなにカッコつけて写真をつけてそれは避けられない。しかし60も後半にきているのにこの写真のふてぶてしい感じは 自分のパブリックイメ…

「物質をめぐる冒険」著:竹内薫

入門書というよりは、概説書という感じ。 幅広く最先端の概略を教えてくれるし、おおまかな トレンドというものも見せてくれる。ただこういうのって、 文系的ストーリーとしてたまたま見えているものもあるので 普通に研究する人にとっては予断になりそうな…

「ユーゴスラヴィア現代史」著:柴 宜弘

ユーゴスラヴィアは東欧にある、いや、あった国だ。 ユーラシア大陸の文化圏が重なるような地域で、 ややこしい地域だという知識しかない。この新書は19世紀からのその国の揺れ動きを丁寧に追ってくれている。 これは一重に読者の力量不足ではあるが、 正直…

「ロゴ・ライフ 有名ロゴ100の変遷」著:ロン・ファン・デル・フルーフト

世界中の会社のロゴを会社の草創期から変遷を眺められる本。 こういうのは単純に目に楽しくてよいですね。会社それぞれのマークの意味の解説での雑学的面白さはもちろん、 マークが変わっている時の時代の雰囲気もなんとなく感じられるのがいい。 少し前まで…

「飛魂」著:多和田葉子

未知の世界は楽しい。 初めていく街の標識の形にも驚くことができる。 曲がり角から漂う香りであったり、聞こえてくる知らないイントネーション。飛魂は中国風の道具立ではあるが、 あくまでファンタジーの世界であって、 知らない植物が生い茂り、知らない…

「ロスチャイルド家」著:横山三四郎

ユダヤ人の陰謀だとか言う時には ロスチャイルドがどうたらなどとくっついてくるものですが 実際のところはあんまり知らないもので読んでみた。古物商というか、古銭を扱う商人として貴族に入り込んでいって 1代で足場を築いてのち、息子たちがヨーロッパ各…

「KPIマネジメント」楠本和矢

KPIというと意識高い系みたいな感じで気恥ずかしいのですが 組織の中ではある程度こいうキーワードを共通語にしながら業務を進展させるのが望ましい。しかし、KPIという言葉だけでは無意味で 各社においてKPIが何に当たるのかを明確にして、 そこを共通のタ…

「夜想曲集」著:カズオ・イシグロ 訳:土屋政雄

イシグロは語り手の人称を意識しながら巧みに 遠くへ連れ出す誘拐犯である。この短編集でもその読者攫いの技量はいかんなく発揮され、 今回は遠くではないかもしれないが、 壁ひとつ向向こう側の、見えずに漏れ聞こえていた物語へと誘われる。音楽と夕暮れの…

「小さな会社のはじめてのブランドの教科書」著:高橋克典

ブランドは小さい会社こそ大事にしようという話ですね。特に今は検索性が高くなっているので、 何かオンリーワンであれば検索された時にもオンリーワンです。方向性として、地域性を出すことも示唆していますが、 地域性はそれ自体が記名性の高い検索タグに…

「一発屋芸人列伝」著:山田ルイ53世

ネタ見せ番組というのはなんというか、 バラエティが行き詰まった時に代わりの突破口として現れ 一発屋芸人はそれとともに社会に溢れ出た。売れるべくして売れたというよりは 売るものがない中で、探し当てた一つの水脈が噴出したという形で 社会構造という…

「人文学と批評の使命」著:E.W.サイード 訳:村山敏勝・三宅敦子

もはや教養というものが欲されることも求めらることも少なくなっている。 そうした中で人文学の擁護者であるためにはいったいどのような資格がありうるだろうか。サイードは文化的でありながら政治でしかありえない領域で闘ってきた人だ。 この本はしたがっ…

「知りたいレイアウトデザイン」著:ARENSKI

古い入門書は持ってたけど、 必要もあったので、最近のものを入手。基本的な考え方やルールをわかりやすく明示するだけでなく、 似た素材を違うアプローチで作るとどうなるかという比較が多くて、 手法の選択にとても役立ちます。また、レイアウトのパターン…

「トマス・アクィナス」著:山本芳久

キリスト教と言っても長い歴史の中で変遷がある。 その中での積み重ねを知ることは今でも十分に意味のあることだろう。トマスは中世の神学者として活躍した人物である。 宗教改革などをしたわけでもないし、黎明期になにかを決定づけたわけではない。 しかし…

「空気の名前」著:アルベルト・ルイ=サンチェス 訳:斎藤文子

ここには湿度と匂いが渦巻いている。 港が近いからだろうか。 たしかにそうした湿度はある。マレビトのための湿度だ。 しかし生臭さはない。 ここには獣の匂いは感じられない。 湿度や匂いはヒトがヒトの為にあつらえたものだ。これらは紛い物ではなく、それ…

「税法入門」 著:金子宏・清水敬次・宮谷俊胤・畠山武道

新しい分野を体系的に学ぼうという時に 必要な視点の枠組みを与えてくれる良書です。租税というものの意義やその他法律、条例との関係など 基礎となる事柄を抑えながら、 各論でもそれぞれの税目の扱われ方の流れを最新のところまで解説してくれている。てっ…

「魂の燃ゆるままに」著:イサドラ・ダンカン 訳:山川亜希子・山川紘矢

20世紀初頭活躍したアメリカの舞踏家の自伝です。このタイトルはやや扇情的な書き方ですが、 実際に恋多き女性としての側面も割とあからさまに そしてさっぱりと描かれています。なんというか、決してカジュアルセックスなんかではないのですが ゼウスが女神…

「サッカー監督はつらいよ」著:平野史

架空のクラブ監督に密着する形で 「サッカー監督」というお仕事がどういうものか教えてくれる本。一応、時系列的なものは含まれているけど 小説仕立てとかではないので、そんなにセンセーショナルではない。それでも単純に知らないことも多く、興味深く読め…

「勝ち切る頭脳」著:井山裕太

井山は囲碁で史上初7冠になった人だ。 今はAIの絡みもあってこうした棋士の話は非常に興味深い。話の流れは自分の半生を踏まえて 勝負の心得や判断など、そしてAIや世界の囲碁界との戦いまで幅が広い。 率直に言うとやや散漫な印象はある。ただ、1989年生ま…

「数学する身体」著:森田真生

数学が何かというよりは 数学とはどこにあるのかという問いに近い本。全体的に論旨はやわらかく、妥当なところだとは思うけれど 正直に言って小林秀雄賞という名前からあの人の圧力をイメージすると物足りない。 (ま、本人は別にそれに寄せるつもりもないん…

「記憶の未来」著:フェルナン・ドュモン

「記憶」と「未来」とはいかにも奇妙な取り合わせである。 しかし、これ以上に今焦点化されるべき問題もあるだろうか。「物語の共同体」以降、標準の言語、教育は焦点化されて それらがネーションを作っていること自体は明らかになっているが 無論、それは善…

「マーシェンカ/キング、クイーン、ジャック」著:ナボコフ

素晴らしい装丁でナボコフコレクションが出ていたので つい買ってしまった。以下ではさくっと6割くらいネタバレしますが、 話の筋は焼き鳥の串のようなもので味わうべきは串ではないです。 とはいえ、読む楽しみが失われるようなネタバレは避けているつもり…

「ベルルスコーニの時代」著:村上信一郎

派手派手しいスキャンダルまみれになって退場した人、 そんな程度の印象でベルルスコーニのことを覚えていた。しかし、そもそもどうやってそんな乱痴気騒ぎをするような人が 大統領になったりしたのか。本書はベルルスコーニを通してその時代の イタリア政治…

「親鸞」著:野間 宏

浄土真宗の開祖である親鸞を語ろうとしているようであるが、 どうも、当時の社会的な要請から親鸞で語ろうとした本のようである。1973年という出版年は政治の時代であったと思う。 とは言っても、それによって歪められた骨子はなく 単に細い道を歩くだけの本…

「森へ行きましょう」著:川上弘美

別の生き方があったかもしれないと考えることは誰にでもあるだろう。 それは選択の結果とかそういうのではなくて、 ただ単に別様に生まれて、伴走しているのかもしれない。この小説は互いに互いの伴走者として1966年の誕生から 2027年の60歳までの愛の物語と…

「ハイファに戻って/太陽の男たち」著:ガッサーン・カナファーニー 訳:黒田寿郎/奴田原睦明

短編がいくつか入っているが、 やはり「ハイファ」が一番小説としてよくできている。 小説的フィクションを強度に転換することが巧みに行われている。そう思うのは要するにほかの短編が ざらりとしたナマの感触のまま突き出されているように感じるからだ。特…

「セカンドハンドの時代」著:スヴェトラーナ・アレクシェーヴィチ 訳:松本妙子

ソ連からロシアへの移り変わり。 国家の崩壊と誕生を生き延びた人々へのインタビューから本書は成り立っている。貴重にしても、ありふれた題材ではある。 国家による抑圧と解放、偽りの国民概念。 実際、本書もその領野からの声をひろっている。ただ、もっと…

「声と現象」著:ジャック・デリダ

さすがにしんどいので寝かせながら読んでた。フッサールをデリダが読み解くという体ではあるものの、 それは解くのではなく、 フッサールの紡いだ糸をさらに編み込んで行くような身振りでもある。現象学的な振る舞いに基づいて還元しながらも 不可分な二重性…

「『その日暮らし』の人類学」著:小川さやか

アフリカから中国への出稼ぎ市場というものがあるとは知らなかった。 文化人類学者としてどっぷり入り込みながらの フィールドワークレポートである。資本主義は流動性を求めていくものだが、 その極限的な姿の一つとしてこの本のキーワード「その日暮らし」…