「津波からの生還」 編:「石巻かほく」編集局
まぎれもなく、被災者の声がここにある。
主婦の人もいれば、役所の人もいる。
食堂経営の人もいるし、漁師の人もいる。
レスキューの人もいる。みなひとしく被災者だ。
これを読んでいる途中に九州の地震は起きた。
読んでいなければ「ひどいことが立て続いた」という
陰惨な額装に飾ってしまうし、今もそうでないとは言えない。
けれども、間違いなく別種の災害であるし、
一つの原因とみられている多数の悲劇は
それぞれ別種の悲劇だ。
だから、これはモニュメントではない。
モニュメントは代表してしまう。
そうではなくて、代表されないものを個々人が抱える。
それは話し言葉で伝えられて、そうしてはじめて個々人が抱えるのだ。
彼らは死者と手をつないでいる。
ことばによってその手はつながっている。
あの場にいなかった読者と、
この場にいられなかった死者の手は
この人たちのことばによってつながる。
それはモニュメントではないが、
モニュメントに捧げられた花束とは同じかもしれない。
- 作者: 三陸河北新報社「石巻かほく」編集局
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