読了レビュー「マルチチュード(上)」アントニオ・ネグリ マイケル・ハート
民主主義と自由、これが彼らの信じるほどよいものかは微妙だが、
世界の道行きに関してはだいぶ正確に見通してると思える。
荒唐無稽な理論などではなくて、様々な現象をむしろ帰納的に整理して見せたのだ。
で中身は?と聞かれるならば、
グローバルと生権力という2つの傾向があるわけで、
ミクロとマクロに引き裂かれながら人々は微塵切りにされていく。
いかにして美味しいミックスジュースになるかではなくて、
いかにして硬く抵抗するかでもなくて、
この傾向を受け入れた上で有効な言説を練り上げようというのがこの本だ。
国民国家はいまや喘いでいる。ならば、この本は尚更に読まれるべき。
マルチチュード 上 ~<帝国>時代の戦争と民主主義 (NHKブックス)
- 作者: アントニオ・ネグリ,マイケル・ハート,幾島幸子
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2005/10/30
- メディア: 単行本
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合衆国の指導者が「対テロリズム戦争」を宣言したとき、彼らはそれを世界中に拡大し、何十年、あるいは何世代にもわたって無期限に続けなければならないことを強調した。社会秩序を創造し維持するための戦争に、終わりはない。それには継続的で絶え間のない力と暴力の行使が必要なのだ。
P.47
市場や貿易を国の管理から自由化すべきだと主張する人びとは、実際には政治的管理を緩和するよう求めているのではなく、違う種類の政治的管理を行うよう求めているにすぎない。国が弱いとか強いとか、政治的な力が経済に介入するか否かの問題ではない。国家やその他の政治的な力がどのように介入するかという問題でしかないのである。
P.274