『日本の神々』谷川健一
幅広く神々を取り扱っているが
少々散漫な印象的はあるかもしれない。
最初は言葉のつながりから語彙にイメージを与えていき。
中盤では歴史的な趨勢をおさえながら
神や霊的なものがどのような意味を持っていたか見せる。
終盤では実地の取材に即して展開する。
どうも、それぞれの部分だけでも
ひとつの本に出来るだろうという気がするので
新書にまとめようとしたのが間違いかね。
八幡信仰のあり方から
沖縄の尚氏が九州から来たのではないかという話は
面白いけど、やっぱり脱線してるんじゃないかな。
とはいえ、沖縄でのユタの事例などは
死のあまりの近さを考えると
取材する信用を得るだけでも大変なものだろうと思う。
実直で地道な学者だ。
- 作者: 谷川健一
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1999/06/21
- メディア: 新書
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アイヌの熊狩歌(イコイキシノツチヤ)は、熊狩に行って熊の穴を見つけた時、熊の穴の入り口に立って槍をかまえながら歌ったものである。歌の文句はまず自分の素性を名乗り、先祖代々自分の家と山の神(熊)との間には特別に友好関係のあった所以を述べ、熊の神がその本来の姿である霊に帰って山を降り、ふもとの村を訪ねてくれるように懇請する内容のものだった。(p.68)
アイヌも結構やってくれるので今ならゴールデンカムイクラスタも面白いんでないか。
百十踏揚にあっては、妻の身分でありながら、神女でもあったということである。南島にあっては聖俗を厳密に分けることはなかった。聞得大君も多くは琉球国王の妻がその地位についた。それら高級神女も神がかりをしたという事実は重要である。(p.126)
高級神女という言い方はそうでない神女もいるということで、
それらもひとつの霊そのものとして祀られもすることを考えると、
男尊女卑的な世界が今持ち上がっているのは
偶然霊的な世界が敗北しただけだという気もする。