ヨモジジ(freaks ver.)

本と雑貨と音楽と、街歩きが好きなオッサン。1981年生まれの珈琲難民が好き放題に語る。レビューのためのブログ。

「ビッグデータと人工知能」著:西垣 通

この人はITなどという言葉で呼ばれる前から
この業界にいる人ですが、正直、僕には全然合わない。

AIの知性というものに限界があるのだから、
万能であるかのように思ってはいけない、
という主張それ自体は受け入れましょう。

というよりも、それはむしろ当たり前なんです。
ただ、その主張をする時に
万能AIという夢想が一神教的なものに通じているとも述べるのは
あまりに粗雑な議論です。

少なくともその夢想がヨーロッパから来たという証はなく
同時発生的に同じような概念が自生するという
可能性をほとんど顧みていない。
また、これは議論の中核ではなくて、単に言ってみた程度の話であり
要は万能ではないという主張を補強する為の小話です。

まぁ、こういうのは手癖でやってしまって自覚はないんでしょうが。

人間と同じでないから人間と同じ知性にならないのは当たり前です。
どこまで成長してもそうでしょう。
それでもなお、シンギュラリティは起こりうると私は考えています。

何故なら、人間とは違う形の知性が存在しうるからです。

優劣とは関係なく、理解が不可能であっても
意思を持っているとみなすことが、
それが人間の能力のひとつなのです。

ヒューマニズムにとらわれるのでなく、
絶えず人間という概念を拡張しようと試みることの一端に
シンギュラリティの夢想は揺らめいているのです。
(ここはとても危うい言い回しですが)

まぁ、情報処理の発展史については概説を抑えています。

下手な切り分けをおこなうと、われわれはコンピュータの作動のリズムに合わせて社会メガマシンの要素と化し、狂気のように振り回されることになってしまう。そうならないためには、今一度、生物と機械の相違を確認しておく必要がある。いったい、「人間にしかできない仕事」とは何なのか?(p.200-201)

人間にしかできない仕事とは信じること、決断すること。
最初、喜ぶことと書いたが、感情は仕事ではない。感情は仕事ではない。