「人類学者への道」著:川田順造
人類学というのは今ではあまり使わない名称かも知れない。
未開の土地を文明の視点から見るという、権力関係が露骨であるから。
今では比較文化論などの名称のほうがポリティカリィコレクトなのだ。
この人もまた、1934年生まれである。
しかし、視線は遠く研究の地であるアフリカから始まる。
著者はアフリカと、フランスと、そして日本を動きながら人類学をしてきた。
その営みの罪深さも含めて、また志としては
純粋に人を理解しようとしてきたことに対して誇りを持って、
このタイトルになっているのだと思う。
アフリカに対する記述も面白いが、
川田は観察している自分自身の関わり方の変化もまた観察している。
こうした視線のありようが、人を知ろうとする人類学への方法であり、
道のりそのものだったと言えよう。
- 作者: 川田順造
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2016/09/01
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
「ごはん」ということばに私が感じる、ふっくらとあたたかなうまみや、塩をつけた手のなかで握った「おむすび」の味を、私はムイという言葉に託して、モシの人に伝えられそうもない。(p.48)
神話や儀礼の上でしばしば人が「超自然的」とか「呪術的」と形容する原理にたよっているようにみえる「未開人」も、同時にきわめて現実的に自然に働きかけながら生きているのであって、さもなければ、彼らは荒々しい自然環境の中で、文明人が夢想したがるような「未開人」として、物理的に存在しつづけることすらできないだろう。(p.103)