「ゴリオ爺さん」著:バルザック
パリの下宿にやってきた田舎青年が社交界でもまれる変則めぞん一刻です。
まぁ、しかしあれよりだいぶ下世話か。
泣き落としにつぐ泣き落としがあらわれるけれども
みんなだいたい自分勝手すぎる。
自分のこづかいが少ないからと言って
カジノで儲けてきてと頼む女なぞこちらから願い下げであるが、
なんとその女は比較的ましな部類の人間である。
あと「不死者」とかいう中二病的ネーミングの男は
なんかするのかと思ったら思わせぶりに焚きつけるだけで
中盤で退場して一切出てこない。不死者なら戻ってこいよ。
まぁ、たしかに死んではいないけど。
そんなわけでほとんど納得できることはないのですが、
爺さんの異常な愛情だけに賭けられた物語なので
そこで読むことはできます。
また、どうやら退場した不死者だけでなく
ほかの脇役も最近のスピンオフ漫画よろしく
バルザックのほかの著作で顔を出すらしい。
そういった仕組みを考えて実行した点でバルザックの功績はあるだろう。
いや、しかし芝居が臭いのはともかくとして
倫理観がずれすぎていてついていけませんでした。
歴史資料としても違い自体は面白いよね、以上。
- 作者: バルザック,平岡篤頼
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1972/05/02
- メディア: 文庫
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「友情もあなたのおそばでは、きっと、俗っぽいところなどないでしょうが」と、ラスティニャックは言った、「ただのお友だちには、絶対なりたくないですね」
こうした初心者向きのばかげた紋切り型も、女性にはいつでも魅力的に聞えるもので、冷静な気持ちで読むから寒々しく響くだけである。(p.219)
おい、バルザック。こっちみてしゃべるんじゃない。
なんか言い訳っぽいぞ。
「これじゃああしたの朝は、三人分のコーヒーしか用意しなくていいんだよ、シルヴィー。どうだろう!あたしの下宿はがらんとしちまって、胸が張り裂けそうじゃないかい?下宿人のいない生活なんて何なの?ゼロだよ。家具を取り除いたみたいに、あたしの下宿から下宿人たちがいなくなっちまった……(p.383)
不死者のおっさんの大立回りのあと、ごたごたして下宿人に逃げられたおばさんの嘆き。
このあと、主人公の若者とゴリオ爺さんも出て行ってさらに追い討ちをかけます。
さすがにここは可哀想だと思うんだけど、新喜劇的展開でもある。