ヨモジジ(freaks ver.)

本と雑貨と音楽と、街歩きが好きなオッサン。1981年生まれの珈琲難民が好き放題に語る。レビューのためのブログ。

「なんで、その価格で売れちゃうの?」著:永井孝尚

値決めは経営とは稲盛さんの言葉ですけど、
もっとも戦略的に決定されるべきものだというのは本当に間違いのない話です。

この本はそうした値決めに関わる視点を
事例を多く出しながら説明してくれます。
ただ新書という形態もあるとは思いますが、考え方の紹介にとどまっていて
なぜその価格にしたのかというプロセスと基準はそれほど詳しくないです。

どのような選択肢があるかを押さえる分にはいいけど
あまり実践的ではないかな。

高ければいいという訳でもないし、
安ければいいという訳でもない。奥の深い話ではありますが
シンプルに2つの関係で考えるのがベストだろうね。

つまるところ「何を」「誰に」売るのか。
この時の「何を」と「誰に」をどれだけ精度の高いものにできるかが
価格決定に入る前の大事なプロセスだろう。
たとえばヤナセの「クルマはつくらない、クルマのある人生をつくっている」なんかは
「何を」売ってるかを明確に意識したコピーで、こうしたものが価格を導いている。

あと、さらに個人的な見解になりますが
個人の範囲でする仕事はスケールメリットが働かないので
基本高い商品としての振る舞いをするのがよいです。
職人のようにオーダーを聞くにしても、独創性を発揮するにしても
いずれにせよ一品モノ的性格があればそれは常にプレミアムになるはずなんで
プレミアムを恐れない値付けが大事です。

コスト削減をせずに値下げ勝負を仕掛けると、現場では何が起こるか?従業員には、「とにかく頑張れ」「サービス残業で乗り切れ」と発破をかける。
取引先には、「仕入れ代金を下げてくれ」と無理をお願いするようになる。
赤字覚悟で、特売セールする。そして安さ目当てのお客さんだけが集まってくる。(中略)
コスト削減なき値下げは、まさに「麻薬だ」。(p.65-66)

長い引用ですが、なんというかデカデカと張り出したい。