ヨモジジ(freaks ver.)

本と雑貨と音楽と、街歩きが好きなオッサン。1981年生まれの珈琲難民が好き放題に語る。レビューのためのブログ。

「台湾生まれ 日本語育ち」著:温又柔

クレオール文学というものがあって、
あのエキゾチックが内包された、
悲しみと楽観のマーブル模様を楽しみつつも遠くに感じていた。

ただ、この温又柔のエッセイはまぎれもなく
日本にもクレオールと同じものが存在しているということを
優しげに提示している。

植民地化が良いことであったなどということはありえない。
ただし、その結果をポジティヴに引き受けていくということは可能であるし
可能であってほしい。

国籍などという帳簿上のことが
しかし、重要になってしまうこの世界の中で
今立っている場所と発される言葉を尊重できるような
環境を育てていかなくてはいけない。
思いのほか脆いものであるから。

「我住在日語」(わたしは日本語に住んでいます)
というのは中国語訳でのタイトルらしいが、
誇らしさを感じるとても良いタイトルだ。

台湾生まれ 日本語育ち (白水Uブックス)

台湾生まれ 日本語育ち (白水Uブックス)

幼稚園の砂場で、どの日本語なら口にしていいのか混乱していた五歳のときと同じように、十九歳のわたしは大学の中国語の授業で、どの中国語なら「正しい」のだろうかと緊張していたのである。(p.45)

台湾生まれであるから、北京語の普通話とも違う言葉でそれが
彼女を二重に責める。

戦後、大陸で「山崎」から劉」に改姓したときの恵美ちゃんの曾祖父は一〇〇年も経たないうちに、自身の曾孫が日本の学校に入り、しかも「日本育ちの台湾人」から中国語で日本語を教わることになるとは想像できただろうか?(p.130)

こうしたことは戦争があったからだと思うのは誤りで、
仕事で移住する人も多い現状では戦争などとは無関係に類似したことは起こる。
だからこれが端的に悪いことではないし、
ポジティブに引き受けられるかが問題なんだ。