ヨモジジ(freaks ver.)

本と雑貨と音楽と、街歩きが好きなオッサン。1981年生まれの珈琲難民が好き放題に語る。レビューのためのブログ。

記号・ジェンダー・女子高生(漫画話。後編)

引き続き二本の漫画の話をする。

好奇心は女子高生を殺す」(以下、「好奇心」)

ササミは心配中毒
(以下、「心配中毒」)


これらが男子高校生になるとどうなるか。
前編では年齢を調整変数に考えて見た。
その時はドラマが成立しなくなったり
読者の受容姿勢の変化が想定された。


ここで性別を変えることで同じことが起きるかと言えばそうではない。
性別の変更は「学生」「勇者」「科学者」などの属性の変更に近い。
要するにドラマは成立するだろうと思う。


ただ、味は違うし、
何より読者マーケットの選定に影響するだろう。


女性が主人公だから男性向けだとか、女性向けだとかではない。
というか、世の中を二種類に分けるだけですむなら
仕事でマーケティングする人は要らないだろう。


BLを女性向けだと言っても
一般的にすべての女性が読んでないことは明らかで
かつ、男性が読まないわけでもない。
しかし、読者が男性、女性である垣根を超えて
「一定の固定のマーケット」が存在していることも確かだ。


セクシャルなものを話題に挙げなくても
SFをベースにするか、剣と魔法を出すか、歴史ものにするか、学園ものにするかで
自ずと読者マーケットが選定される。
その中でギャグをやるか、友情を描くか、またはビルドゥングスロマンを描くか
その時に切り口として年齢が大きく影響する。
しかし、男でも女でもギャグも友情モノもビルドゥングスロマンも描ける。
これはただの背景なのだ。


しかし、男子学生は選ばれなかった。なぜだろう。
(これが本題でした。長い、長い前振り)


「好奇心」のほうでは、セクシャリティ
差し挟まないために女子高生が選ばれたように思う。
ここ数年のジャンプはかなり2次創作の為に作られている感があるが
男子学生というのはその言葉だけで現在は相当セクシャルである。
(個人の感覚です)


テニプリから始まり、黒子のバスケ、ハイキュー、
これが男子学生というもののポテンシャルである。
Q.E.D.)


「心配中毒」ではどうか。
ダベリ漫画というのは一つのギャグマンガの定型として存在する。
日常の雑感を脈絡なしに放り込めるので
切り口で楽しませる芸としてはやりやすい形式だ。


*** 参考 ***

THE3名様wiki
マヤさんの夜ふかし

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「心配中毒」はそう言えば女性ばかり出てくる。
メインは女子高生だが、近所のお姉さんや、婦警さんなど。
そう言えば自治会のお爺さんたちは出てたな。


このゲスト登場キャラ自体が概ね出オチ並みの
テンプレ感を持って現れて作品を彩っている。


ということは、男子学生はテンプレ感が足りないのか。
そんな訳はない。そうではなくて、漫画のコンセプトを考えればわかる。


キャッチコピーはこうだ。
「余計なお世話をあえて焼く系JKの、中毒性ありありな日々。」


余計なお世話ということは
普通の人は目にしても話題にせずにスルーするということだ。
もう少し付け加えると
「いじりにくい所もあなたに代わって余計な一言を言っておきます」
という漫画なのだ。


最新話のゲストは
トイカメラが出すヴィンテージ感で遊んで見た」系女子である。
ここから導き出されるのは、男子学生のテンプレは
すでにいじられすぎててネタの鮮度が悪すぎるということだろう。


主人公を女子高生にしたのは
そうした触りにくいところをいじりに行く時に
比較的フラットに入りやすいという辺りではないか。


以上、こうして見てきて思うところは
女子高生という記号の浮世との接点の遠さである。
そりゃぁ商品になってしまう。


ヨーロッパで胡椒が珍重されたのは美味しさ、保存料というだけでなく
ヨーロッパになかったのが一番大きい。
女子高生が胡椒なら、男子学生は何か。
塩じゃね?とりえあずふっときゃいい良いみたいな。


*** 蛇足 ***

ジェンダーという話をするなら、
こうしたホモソーシャルなドラマではなくて
男ー女のペアがあるところでの描き方のほうが大事だ
という話はあると思いますが
それはだいぶ変数が多い上に、興味の無い話題でした。

つまるところ、必ずしもそうしなくてはならないわけでもないだろうに
選ばれた女子高生という記号の特性を考えたかったのです。
副産物で年齢のほうが自分にとって大きなファクターとなることは意外な発見でした。

最後まで読んだ方はお付き合いありがとうございました。

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