ヨモジジ(freaks ver.)

本と雑貨と音楽と、街歩きが好きなオッサン。1981年生まれの珈琲難民が好き放題に語る。レビューのためのブログ。

「人工知能はどのようにして「名人」を超えたのか?」著:山本一成

将棋の名人を破ったポナンザの製作者が書いたものだが
かなり読みやすく整理されている。

まず、コンピュータは
記憶と簡単な計算しかできない、という
前提から入っているのもいい。
しっかり初心者の視点を押さえてくれている。

自分より優れたものを生み出すために使われている技法は
専門的なようでいて、似た形で
我々自身が自分を教育している方法にも共通するポイントが感じられる。

丸暗記では応用が効かない。
ひたすら実践を繰り返すのもいいが、固定化してしまう恐れがある。
抽象化して捉え直すことで応用力の高い判断ができる。

こういう捉え方をしていると、まだ人間のモノサシで考えているわけだが
もっと考えられないようなやり方で変わっていくことで
進歩のペースは速くなっていくのかもしれない。

まぁ、しかし、巻末を読んでいると
ポナンザによって開拓されたフロンティアで
より人間の将棋が広がったことへの期待感が強く表れている。
製作者の将棋への愛情が感じられるのがこの本のよい所かもしれない。

「サイコロには知能がない」というのは、「脳内のニューロンが、隣のニューロンに信号を伝えていること」を知能がないというのと、私には一緒のことに思えます。この世界には、私たち人間以外の知能が存在するのです。(p.147)

この最後の一文をポジティブに、かつ当たり前のこととして考えることは
僕らが善く生きるためにもよいと思う。

人工知能は、私たちからさまざまなことを学習していくでしょう。倫理観もその1つです。そうなると試されるのは、人類自身ということになってくるのではないでしょうか?(p.198)

なるほどと思える一面と、倫理は人間の中で
何故発生できたのかということを考えないと、
彼らは別個の倫理を持ちうるのではないかという疑義はある。