ヨモジジ(freaks ver.)

本と雑貨と音楽と、街歩きが好きなオッサン。1981年生まれの珈琲難民が好き放題に語る。レビューのためのブログ。

「残夢整理」著:多田富雄

1934年生まれ、2010年没。
青年期に戦後を過ごして来たそうした人のエッセイである。

右派ではないが、日本は確かに
敗戦を経て接ぎ木をされたというのはある。
どのように切断されて、なにが残ったのか
今からでは見えないものも多い。

それにしても、感傷的な憂いを帯びてはいるものの
根本的なところで明るい感じがするのは
この著者自身が悔いはあれど、
生き続けて来たことに充足感を感じているのだと思える。

それだけ、死の匂いは濃厚で
しかし、それは特別な悲劇ではなかった。
そういう時代を経て接ぎ木された上に、
曲芸師よろしく私たちは座っている。

残夢整理―昭和の青春

残夢整理―昭和の青春

何かを発見しようとするなら、文献なんか読むな。そんなものにはなにも書いてない。自分の目で見たことだけを信じろ。わしの言うことを、ゆめゆめ疑うことなかれ(p.173)

医学の道での師匠のキャラクターもなかなか印象的です。