「残夢整理」著:多田富雄
1934年生まれ、2010年没。
青年期に戦後を過ごして来たそうした人のエッセイである。
右派ではないが、日本は確かに
敗戦を経て接ぎ木をされたというのはある。
どのように切断されて、なにが残ったのか
今からでは見えないものも多い。
それにしても、感傷的な憂いを帯びてはいるものの
根本的なところで明るい感じがするのは
この著者自身が悔いはあれど、
生き続けて来たことに充足感を感じているのだと思える。
それだけ、死の匂いは濃厚で
しかし、それは特別な悲劇ではなかった。
そういう時代を経て接ぎ木された上に、
曲芸師よろしく私たちは座っている。
- 作者: 多田富雄
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/06
- メディア: 単行本
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何かを発見しようとするなら、文献なんか読むな。そんなものにはなにも書いてない。自分の目で見たことだけを信じろ。わしの言うことを、ゆめゆめ疑うことなかれ(p.173)
医学の道での師匠のキャラクターもなかなか印象的です。