「『その日暮らし』の人類学」著:小川さやか
アフリカから中国への出稼ぎ市場というものがあるとは知らなかった。
文化人類学者としてどっぷり入り込みながらの
フィールドワークレポートである。
資本主義は流動性を求めていくものだが、
その極限的な姿の一つとしてこの本のキーワード「その日暮らし」はある。
もちろん、しかしこれは末端であるし、
インフォーマルな経済ですらあるのだけれど。
ただ、このインフォーマルな動きは
経済の発展によってなくなるような類のものではないのだろう。
いや、というよりはこのようなものとして発展してきたという感じがする。
無論、資本を蓄えるよりも分散させていくようなこのやり方は
メインストリームになることはないだろうが、
一方で、必ず残余として存在感を見せる動きなのだと思う。
そして、この生き方は働き方のオプションが増えて流動性が増していく
日本の中でもきっと残余としてであれ、主張を見せていく気がする。
「その日暮らし」の人類学 もう一つの資本主義経済 (光文社新書)
- 作者: 小川さやか
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2016/07/14
- メディア: 新書
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トングウェ人は、集落の住民が食べられるだけの食料しか生産しないにもかかわらず、集落を訪れる客人をもてなすために、生産した食料の四十%近くも分け与えていることである。(p.42-43)
この気前のよさはある種の普遍性を持っている気がする。
それにしても、命がけのおもてなしである。
広州のアフリカ系交易人は、たとえ中国語を話すことができなくても、電卓とジェスチャーを組み合わせて中国系商人とコミュニケーションできるからだ。(中略)アフリカ系交易人が「black」と黒のタンクトップを指さし、中国人店主がそれを手渡す。交易人が品定めの後に首を横に振ると、店主は違う黒のタンクトップをみせる。(p.114)
ここの記述は割と衝撃的でした。
が、買い付けだけならなるほどそうすることもできるわな。
しかし、それでアフリカから飛び出す胆力は凄いな。