「帳簿の世界史」著:ジェイコブ・ソール
ひと昔前、武士の家計簿がヒットしていましたけれど、
どうやってお金を使ってきたかというのは誰しも興味があるものでしょう。
本書は会計が生まれたローマ時代から現代までの歴史を紐解くものだ。
中世の宗教的規範と会計のマッチングの問題や、
18世紀に株式会社がすでに投機バブルを引き起こしていたこと
19世紀初頭のイギリスにおいても国家予算は収支を合わせられなかったこと、
興味深い事例に事欠かない。
明らかに必要であるにもかかわらず、その重要性ゆえに
すぐに打ち捨てられてしまう。
正しく会計を把握することは大きな組織を運営するのに特に重要だ。
しかし、その重要性とは特に問題や不調の発見に役立つのであって、
誰かが責任を負わされる類のものだ。故に正しい会計帳簿は嫌われる。
しかし、嫌われてもごまかされても最後に求められるのは正しさである。
そうでなければ、時代は先に進まず、滅びるだけだと歴史が告げている。
- 作者: ジェイコブソール,Jacob Soll,村井章子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2015/04/08
- メディア: 単行本
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ダティーニの帳簿の収支尻がつねに黒字であることは、神に対する負い目は増える一方であることを意味した。(中略)協会は、富を貧者に分け与えるようダティーニを諭した。友人たちは、そんなことをすれば坊主を喜ばせるだけだと忠告したが、ダティーニは遺産をプラートの教会に寄進することをきめる。(中略)いよいよ死を迎えるその日、ダティーニはなぜ死ななければならないのかと考えたらしい。それなりに信心もしたし神に気前よくあれこれ捧げたというのに、会計の達人としては、これでは帳尻が合わないと感じたのかもしれない。(p.58-59)
14世紀イタリアの商人ダティーニに関する記述だけれど、
概ねこの振幅の中に今もいるんじゃないだろうか。