「職業としての小説家」著:村上春樹
出たのは少し前かとは思いますが
すでに功なり名を遂げた人物の
ありがたいお言葉集ですよね。それは避けられない。
こんなにカッコつけて写真をつけてそれは避けられない。
しかし60も後半にきているのにこの写真のふてぶてしい感じは
自分のパブリックイメージを知ってても知らないフリを突き通す
小説家らしいフィクションに塗れた在り方ですね。
とまぁ、知ってはいたけど春樹のこと僕は大嫌いなんだなぁと思うわけです。
ただエッセイの出来としては悪くない。
職業としての、と書いてるけど規範ではなくあくまで春樹個人が
具体的にどのようにして書いてきたか、はぐらかさずに書いてる。
海外展開する際の流れも克明でわかりやすい。
もちろん、とりわけ個別的な職業なんだから、
春樹にとらわれず好きにやったらいい。
いや、誰しも個人的な人生だから好きにやったらいい。
この本は多分、そういうことを確認したい年頃にちょうど良さそうではある。
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2016/09/28
- メディア: 文庫
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どの作品をとっても「もう少し時間があればもっとうまく書けたんだけどね」というようなことはありません。もしうまく書けていなかったとしたら、その作品を書いた時点では僕にはまだ作家としての力量が不足していたーーそれだけのことです。残念なことではありますが、恥ずべきことではありません。不足している力量はあとから努力して埋めることができます。しかし失われた機会を取り戻すことはできません。(p.159)
謙虚さよりは、ぎりぎりと角張った矜持を感じる。
河合先生の駄洒落というのは、言ってはなんですが、このように実にくだらないのが特徴でした。いわゆる「悪い意味でのおやじギャグ」です。(中略)それは河合先生にとっては、いわば「悪魔祓い」のようなものだったのではないかと僕は考えています。(p.303)
なんというか、他の人間がとりわけ取り上げられるのはこの章だけで
河合さんの大きさというものを感じると同時に、
春樹が日本にいる理由なんてほとんどなかったんだろうとも思う。
「悪魔祓い」ね、屈伸みたいなことだろうが、
社会の悪魔祓いはどうやったらいいんだろうかねぇ。