ヨモジジ(freaks ver.)

本と雑貨と音楽と、街歩きが好きなオッサン。1981年生まれの珈琲難民が好き放題に語る。レビューのためのブログ。

「新・日本の階級社会」著:橋本健二

2000年に佐藤俊樹の「不平等社会日本」が出てから18年。
今の日本の社会階層についての本格的な研究の後続である。

それまでの研究にも敬意を払いながらも
独自の照射角度で「階級」の実態をあぶり出す一冊となっている。

この人たちはなぜこのように考えたり行動するのかなど
階層ごとのイメージを具体的にするような考察がしっかりなされているのが好感が持てる。
その分やや記述としてのテンポが悪くなってしまっている気はするが、
知的誠実さのあらわれと言っていいだろう。

今回の分析では、資本家、旧中間階級(自営業等)、労働階級のほかに、
雇われではあるが経営側に近い管理職集団「新中間階級」と
派遣やパートなどで不安定な職業環境にある「アンダークラス」を付け加えている。
この区分けによって現れてくる思考様式の組み合わせが
非常に興味深くしかも、実感としてわかる部分がある。

まずは現状の把握として
十分に説得的な内容となっている。
さまざまな個別の社会問題はあるが、そのどれもの前提となるだろう。

世代間移動に関する先の三つの仮説は、どれか一つが正しいというわけではない。それぞれの階級が、異なる趨勢を示しているのである。そして近年の変化についていえば、資本家階級と労働者階級は世代的な継承性を強めて固定化したのに対し、新中間階級は逆に継承性を弱め、旧中産階級には変化がなかったといっていいだろう。(p.133)

これは面白い指摘。
流動的で能力を評価しようとする労働市場の中で
新中間階級は自由市場に近づいているのだろう。

二○一五年SSM調査データから、有配偶女性の収入と夫の収入との大小関係をみると、夫より収入が多いケースはわずか六.○%、夫と収入が等しいケースが七.八%で、八六.二%は夫より収入が少なく、しかも六八.八%までが収入が夫の半分以下だった。(p.155)

こうして言われるとなんというアンバランスだろうかと思う。
階層の問題も大きいが男女間のアンバランスを是正する必要性もかなり高い。
とりあえず税と社会保障の一体改革をとっととするのだ。

平等への要求と平和への要求は、新中間階級、パート主婦、旧中間階級では結びついており、また平等への要求と多文化主義は、資本家階級と新中間階級で強く結びついている。しかし両者がともに強く結びついているのは新中間階級だけであり、とくにアンダークラスでは、平等への要求が排外主義と強く結びついてしまっているのである。(p.241)

それぞれの階級ごとでの思想に関する相関が違うという指摘。
これはたとえば新中間階級が平和主義者が多いとかいう話ではなくて
相関なので新中間階級では「平等を求めないものは多文化主義ではない」傾向とかそういうこと。
逆にアンダークラスでは「平等を求めるなら多文化主義ではない」傾向がある。

アンダークラスが排外主義に直結しているわけではないが、
非常に厄介な結びつきであるのは間違いない。
この階層が現在進行形で増えているということは、
社会の大きな地殻変動につながる可能性があるだろう。