ヨモジジ(freaks ver.)

本と雑貨と音楽と、街歩きが好きなオッサン。1981年生まれの珈琲難民が好き放題に語る。レビューのためのブログ。

『武器としての交渉思考』著:瀧本哲史

ツールという言い方をせずに武器というのは
まったくもって穏当ではない。
けれども、そうしたものを探している人に配りたいからこそこの本のタイトルであろう。

しかし、交渉は明らかに戦いではない。
戦いは敵に敗北を突きつけることだが、
交渉はそれ以外の道があることを期待してのコミュニケーションになる。

(戦争は外交の一環だという時に、
一方でそれが下策なのは自明だ。
コミュニケーション放棄のコミュニケーションだからだ。)

中身はそれをちゃんと反映しているし、
故に相手を叩くような交渉術ではなく、
先に進むための、より広いフィールドに出るための
きっかけとして交渉が据えられている。

いっとき、著者の「武器」シリーズは清新なイメージで売られていたが
しかし、この現状認識に基づく「武器」という言葉選びは
著者が日本の若者の状況をのっぴきならないものと感じているからではないか。
もろもろ崖のふちかもしれないが、しかし、何かをすることはできる。
その時の助けになる本だろう。

武器としての決断思考 (星海社新書)

武器としての決断思考 (星海社新書)

 複数の人が集まってひとつの目標に進むときには、大きなビジョン(ロマン)と、それを実現させるためのコスト計算(ソロバン)の両方が大切になるわけです。
 そして、交渉こそが、そのロマンとソロバンをつなぐ役割を果たしてくれるのです。(p.69)

ロマンは大事。人が自我を持って生きるならロマンを失っては生きられない。

 相手がどれほど非合理であっても、大切なのは、その交渉によってどれだけ大きな実りのある合意を結べるかです。
 交渉は相手とケンカをしたり仲良くなるために行うのではありません。(p.239)

非合理的な人間との向き合い方についても一章を割いている。実用を意識した配分だと思う。
そして、そこでもそれ相応のやり方がある。
もっとも、こちらから相手の合理が見えない場合も多いので、そこを先に考えたいところだ。
だから後ろの配置だろうね。