『秋本治の仕事術』著:秋元秋本治
言わずと知れた「こち亀」の作者の本である。
長寿連載というだけでも十分に偉大なことだけれど、その間ただの一度も落とさないというのは
やはり並大抵のことではない。
とはいえ、ビジネス本として見れば取り立てて大きなことはないと思う。
それは要するに「当たり前の水準を高く保つ」ということで
そこに至るためのディティールが欲しいならあまり役には立たないかもしれないですね。
連載中を振り返っての率直な言葉などもあるので
そういうところも込みで楽しむのが良い本かと。
“座ったら描く”。この名言は、尊敬するさいとう・たかを先生の言葉です。座ったら仕事をするだけ……、非常にシンプルですが、漫画家だけではなくあらゆる仕事に使える心構えなのではないかなと思います。(p.148)
孫引きになってしまうけれどもさいとう・たかを先生は作風と一緒になったプロフェッショナルなのかと驚き。
集中力が切れるのは、ひとつの仕事が終わったとき。それが恐いので僕は終わった次の日から、すぐ次の仕事をはじめるようにしています。(p.30)
全般的におおらかな印象なんですが、この「途切れる」ことに対する恐怖心は著者の中でも
珍しい怯えで、ほとんどここから始まっているような気がします。
これを核にしながらも、それが前面に出る前に対処できているのが彼の仕事の良さでしょう。