ヨモジジ(freaks ver.)

本と雑貨と音楽と、街歩きが好きなオッサン。1981年生まれの珈琲難民が好き放題に語る。レビューのためのブログ。

『時間はどこから来て、なぜ流れるのか?』著:吉田伸夫

時間の話はSFっぽい観念も含めて

気になってしまう。

 

標高差が時間の進み方に与える影響を調べた実験から始まって

「タイムパラドクス」「時間はなぜ流れる(ように感じる)のか」など

ワクワクする小見出しが並ぶ。

 

とはいえ、中身はそれなりに手ごわい感じではあるんですが、正直

なかなかきっちりついていくのは難しかったです。

時間が位置と比べて特権的なものではない、というところだけわかっておけば

一般人としては十分でしょうか。

 

逆に、詳しく知りたい人向けの短めのコラムも充実していて

だいぶ欲張りな新書になってると思います。

 

未来は決定されているのか、など

SFの設定にこだわりを持ちたい人はこのあたりのことは

目を通していてもいいかもしれないですね。

 

議論になっているところもそのまま提出されていることが多くて

探求心の強い方に応えてくれる内容ではないでしょうか。

 

時々ロマンティックな言い回しも出てきて、

そういうところもよいですね。

 

 

 

相対性原理を認めるならば、「現在」だけがリアルなのではなく、「過去」も「未来」も同じようにリアルだと考えざるを得ない。「現在」という物理的に特別な瞬間など、もともと存在しないのである。(p.76)

この後、「持続的に存在する」という用法が批判されているときに、ベルクソンを思い出すけれども、彼は意識について持続を用いたのであって、物質が持続しているわけではないので、彼の主張は維持できそう。

 

そして、実際、本書の時間の流れも意識にかかわってくる。

 

人間にとって日常的な大きさとは、空間が1メートル程度なのに対して、時間は1秒程度である。人間の時間のスケールは、物理的に自然な単位の数億倍である。

 日常的に使われる時間の単位が空間に比べて桁外れに長いのは、それだけ脳の働きがゆっくりしていることを意味する。(p.208)

 

光が自然現象の基本だとしたら、という話ではあるけれど、

光が速いというよりも脳が遅い、というのも面白い。