ヨモジジ(freaks ver.)

本と雑貨と音楽と、街歩きが好きなオッサン。1981年生まれの珈琲難民が好き放題に語る。レビューのためのブログ。

「財務会計講義」著:桜井久勝

金融クラスタでお薦めしてる人がいたので読んでみた。

理論的な面でかなり包括的に解説してもらえる。

専門書としての難しさはあるけれど、
ややこしいところはその都度、腑分けした表が出たり、
仕訳の参考例が載っていたり、丁寧なつくりになっていると思います。

ただ、僕が読んだのは19版で、ゆっくりやってるうちに
毎年改訂していくからもう23版まで出てるんですよね。
恐ろしや。

ということで、入門者が全体的な見取り図をイメージするのにもってこいなだけでなくて
実務者が最新の会計情報を確認するにも最適ですね。
素晴らしい仕事です。

企業内部では、経営上の意思決定と計画の設定のために、また各管理者の業績評価と統制のために、会計の記録と報告書が利用される。しかしそのような管理会計の具体的な内容は、企業の特性や経営戦略によって多様であり、経営者みずからが必要に応じてけっていするものである。
 これとは対照的に、財務会計は企業外部の利害関係者を会計報告書の受け手として行う会計である。したがって財務会計は外部報告会計ともよばれる。本書で解説されるのは、企業会計のうちでも、企業外部の利害関係者に対して会計報告を行う財務会計の領域である。(p.3)

管理会計財務会計も同じ会計を利用するのでつながっているが表現や分析の枠組みが変わってくる、ということ。財務会計は外部に対するものなので、特に他の企業と比較可能な形で表示されていることが求められるので、会計基準なんてのができてくるんですね。

「「空腹」こそ最強のクスリ」著:青木厚 

前に読んだ16時間あけなさいと似たような文脈の本ですね。
同じ内容でも実践上の書き方に違いがあるかもしれないので。

前のものよりも全体的に脅し的な内容が多く、
はぁそうですかというところ。

糖質制限と比較した優位性にも簡単に触れたりしているのはありましたが
実践的な手法についてあまり触れておらず、
食い足りない感じですね。

空腹が必要なので仕方ないんでしょうか。
全体的にネガティブなモチベーションの作りになってるので
(「こうならないために、、、」みたいなやつね。)
あんまり印象はよくありません。

とはいえ、先に類似書物を読んでいなければ
単体で金返せとは言わないか。くらいの。

新しく元気なミトコンドリアが細胞内にたくさんあればあるほど、たくさんのエネルギーを得られ、人は若々しく、健康でいられるのですが、オートファジーによって、このミトコンドリアも新たに生まれ変わります。(p.85)

このオートファジーを発動させるのが16時間の空腹時間ということのようです。
ふーん。くらいですよね。元気なミトコンドリアがどれだけいるか数えられないのと、
ミトコンドリアが元気であることは本人が健康であることの必要条件かもしれないけど、十分条件じゃないですし。

健康はとても大事な話なので
参考にしても鵜呑みにしない方がよいかなと個人的には思います。
まぁ、困ってるんで読みますけども。

「色彩の手帳」著:加藤幸枝

都市計画を与件として個別の建築の色合いを考えるときの
実践的なヒントが書かれている。

実務的なトーンの本ではあるけれど
写真はどれもフルカラーで(当たり前か)綺麗ですね。

実直な選び方が中心ではあるものの
その中でもなぜその色を選ぶのか、責任をもって取り組んでおられるのが伝わる。

周囲の環境(自然も人工物も含め)との
調和の中で見え方を考えるという基本方針の中であらわれる色合いは
この場所に根付く建築であるようにという願いを込めたメッセージでもあるだろう。

モノトーンに見えるようなところにも
イエローをうっすらと入れているのを見つけるなど
プロの仕事と思う。

自然界の基調色は、大きな面積を持って存在しますが、解像度を上げていくと細かな粒子の集積であることがわかります。
まとめて灰色に見える河原の石もひとつひとつ丁寧に観察していくと、黄味や緑味や青味など、ほのかに色気を持ったグレイの集積であることがわかります。(p.78)

こういう細やかな観察の中から自然色の多様さ、
と言われるとなるほどと思う。
さまざまなテクスチャがありながら自然色として山を見たり
河原の石を見たりする。その感性はまだしばらく人の基調にあるだろう。

「財務3表一体理解法」著:国貞克則

財務3表とは「貸借対照表」「損益計算書」に加えて
キャッシュフロー計算書」まで合わせた3つの会計書類のことだ。

本書はそれらの数字のつながりと
表の内容の意味をとても丁寧に教えてくれる。

自分としては食い足りない感じではあるけれど
人に説明する時にはこうした分かりやすい解説を下敷きにした方が
よいだろうと思う。

発生主義についての理解と
簿記の仕訳とB/S ,PLの結びつき
純資産について

このあたりが実際ネックになるだろうが、
ひとつひとつの取引を丁寧に追いながら解説するので
まともに読めばこれで分からない人はいないだろうくらいの丁寧さだと思う。

最後の方はちょっと発展系の話が入っていて
資本取引は実務でほとんどさわってこなかったので
この辺は読めてよかった。
(まとめ直されて、新版では発展の方に入ってそうだ)


会社がお金を集めてくる方法は3つしかありません。それは他人から借りるもの(負債)、株主から資本金として注入してもらうもの(純資産)、そして自分の会社が稼ぎ出すもの(収益)です。これが試算表の右側に表されています。この3つの方法で集めてきたお金が、すでに外部に支払われているもの(費用)と、何らかの形で会社の内部に残っているもの(資産)の2つに分類して表されているのが、試算表の左側なのです。(p.47)

これは複式簿記の形をそのまま説明しつつ、その結果として作られるB/SとPLの説明になっている。
原則としては分かりやすく、面白い仕組みだとおもう。

ただ、資産や費用、収益なんかも厳密に考えると境界的なものは多くて
そのせいで粉飾的なことも起こってしまうこともある。
そもそも会計書類は会社の姿を正しく表して把握するためのものであり
会社自身の利益追求のために必要だという観点を揺るがしてはいけない。

そのうえで会社自身の姿を正しく表そうとすれば
すべき処理の幅というのは大きくぶれることはないはず。

あ、これは関係ない独り言になってしまいましたね。

「地政学入門」著:佐藤優

2015年から2016年にかけて行った連続講義(市民講座的なものか)を元にした講義録である。

ということはおおよそ想像がつくと思いますが
広く浅いかんじです。

カバー裏に「帝国化する時代を読み解く鍵となる政治理論、
そのエッセンスを具体例を基に解説する決定版!」と書いてあるとおり
あくまでエッセンスの解説ですね。

それにしても佐藤は胡散臭い。
何が胡散臭いって、「これは危ない理論と言われてきた」
なんて掴みを何度もやるが、そうやって目眩しをかけている。

わざわざ言及することで、注意喚起義務は果たす良心的な語り手に見せようとしている。
しかし、危うさを無害化できるわけではない。

単なる地勢学であれば、もう少し無害だが、
彼がやりたいのは明らかに人種概念に踏み込んでおり、
鋭利な偏見のメガネである。

(和辻の風土も同じ線上だと感じた)

ただ、実務上、それが要求されたであろうことは想像に難くない。
有害ではあるが、利用価値がある概念だというあたりか。
(まぁ、彼自身もそう言ってるわけだが)

少し前の本であるが、ウクライナ問題にも触れられており
前線で動き回っていたプロであることを感じられる。

 錬金術は、何百回も何千回も成功しているんです。実際に金が生まれている。しかし、そんなことは近代科学的には絶対あり得ません。卑金属は貴金属にならないから。
 ということは、錬金術師は何をやったのか。手品をしていたわけです。(中略)
 ここでユング錬金術の秘密を解き明かしてこう言っている。錬金術師の特徴は、そこにいる人たちの無意識の領域を支配する能力を持っていることだと。(p.87)

明らかに佐藤自身もこのたぐい。厄介。
それはそれとして、そういう厄介なやつはそこらじゅうにいるんだという話ですね。

第二次世界大戦中、ウクライナ人のうち約三〇万人がナチスドイツ側に協力して、ウクライナ民族軍をつくりソビエト政権と戦いました。もちろんユダヤ人殺しなども散々しています。ソビエト側に加わったウクライナ人もいて、そちらは二〇〇万人。だからウクライナにとって第二次世界大戦ウクライナ人同士の殺し合いだったのです。(p.287)

わりと悲惨な話ではあるけれど、
東欧ー中東の紛争はしんどめなのが多い。

このエリアが地政学的に焦点になるような場所だからだと説明されるにしても
そこからの解法は別で考えなくてはいけない。

「ホテル」著:エリザベス・ボウエン 訳:太田良子

これは装丁で買ったと言って差し支えない本で
中身も非常に香り高いような気がしたんだけれど、
個人的にはうまく読めなかった。

イタリアのホテルにバカンスに来た人々の
交差する人間模様と行ったところ。

僕が恋愛のさやあて的なものに興味が持ちにくいうえに、
上流階級らしいっちゃらしいんだけど、ほのめかしの多用で
登場人物の関係が分かったかと思ったら肩すかされてしまったりしてしまう。

とはいえ、訳者あとがきを読むとある程度納得のいくものであった。
これが書かれた1927年というのは戦間期であり、
第一次世界大戦が1914ー1918、第二次世界大戦が1939ー1945)
何か厭世的なところや陰鬱な空気が晴れないところはむしろ
そのような空気を意図的に描いているということだろう。

だから、恋愛ドラマは補助線として引かれているだけで
この小説はそのために描かれたわけではない。
そうでもなければ、どれもこれもドラマが起こる直前で
ご破産になってしまうような作りにはしないだろう。

実際、バカンスのホテルという設定も
なにか宙ぶらりんになっていることを露わにしている。

とはいえ、本当に読めなかったので
ちょっと久しぶりに出た登場人物なんかがいると
毎回巻頭に戻って「誰?」とか確認しながらの読書でありました。

シドニーは、おそらく二十二歳で、明るい顔色と整った目鼻立ちをしており、表情が豊か過ぎて顔のしわがしょっちゅう伸びたりちぢんだりしている。言われたりほのめかされたりすることに大袈裟に反応し、眉が悲劇的に吊り上がったり、瞳を凝らしたり、口元をすぼめると一本の線になり、それは大人の口元になる前触れだった。(p.22-23)

ヒロインは快活な女性として描かれている。

「あなたは人を惹きつけられるわ」ミセス・カーが言った。「でも、あえて言えば、楽しませたい欲望を理解しない仲間には無関心なのが、実際には一番の安全策ねーーあちらに行ってテニスしないの?」(p.23)

しかし、どうもスッキリとしない大人たちの物言いがかぶさってくる。
思えばこの辺のところで主題ははっきりしていたんだろう。

「正解は一つじゃない 子育てする動物たち」齋藤慈子ほか編

動物学者たちによる、それぞれの動物の子育てを紹介する本。
もっとも小さいものはアリから、大きなものはゴリラまで19もの種類の生き物たちが出てくる。

よい子育てについて人の親は悩むが
「よい」とは何かを相対化するための試みでもある。

当然、動物種によって子育ての仕方が違うのはそうなのだが
同じ種の中でも幅があることがあるのも興味深い。
子育ての方針というのは、それぞれの環境や状況の中でその都度選び直されるものだということが分かる。

各動物たちについての論説を専門の研究者が
ひとつずつ執筆するその終わりに自分の子育てについても語ってもらうコラムがあり
これもなかなか面白い。

動物の中ではどうやっても過保護に見える「ヒト」の子育てではあるが
これはこれで、少産少子の種族の選択としては正しいものである。
結局、よそはよそということになってしまうのではあるが、
長期の子育てである以上、途中での方針変更だって十分に考えられるのがヒトの子育てでもあるだろう。

病気で余命三ヶ月の人が三ヶ月後に亡くなるのは「善い」ことでしょうか。自然であることとイコール道徳的に正しいとしてしまうのは、いささか安直であることがわかります。
 さまざまな子育ての例を知って、「こんなやり方があるのか!」「こんな手抜きもあるのか!」と驚いてほしい。そう私たちは考えています。しかしその時に、「この動物は道徳的に劣っている」とか、逆に「人間より道徳的だ」といった価値判断に飛びついてしまわないようにも、お願いしたいのです。(p.9)

科学者としてしごく真っ当な表明ではあるが、子育て本となるとこういった点はより慎重さが求められるゆえの序論ですね。

宿主がちょうど卵を産んでいる時期に巣の周りでカッコウの姿を見ると、巣の中の卵にも注意するようになり、少しでもあやしい卵は巣から捨てるようになります。宿主にとっては巣の周りでカッコウの姿を見たということは、托卵されている可能性が高いことを意味するからです。ジュウイチやカッコウが托卵する際、宿主の巣に滞在するのは一〇秒程度ですが、これは文字通り、宿主にばれないようにこっそり卵を産み込むためです。(p.264-265)

仁義なき托卵バトルなどもあり。