2017-01-01から1年間の記事一覧
正直メンタリズムは胡散臭い。 読み終わっても胡散臭いのは変わらない。それでも、これほど実戦的で簡潔にまとめられたものは 中々お目にかかれないのではないかと思う。実戦的というのは、書くために書く仕事をしているのではなくて 仕事の中で手段として文…
人類学というのは今ではあまり使わない名称かも知れない。 未開の土地を文明の視点から見るという、権力関係が露骨であるから。 今では比較文化論などの名称のほうがポリティカリィコレクトなのだ。この人もまた、1934年生まれである。 しかし、視線は遠く研…
1934年生まれ、2010年没。 青年期に戦後を過ごして来たそうした人のエッセイである。右派ではないが、日本は確かに 敗戦を経て接ぎ木をされたというのはある。 どのように切断されて、なにが残ったのか 今からでは見えないものも多い。それにしても、感傷的…
最近、舞台というものを観ていなかったのもあって、 ダンスというものを観に行った。スタートの立つスタンスの取り方がかかとをつけていたり、 肩幅に広げていたり、内股気味であったり、最初から差異が強調されている。8人のダンサーのうち3人は関西だが、…
ドゥアルテ大統領で悪目立ちをしてしまった感はあるものの しかし、どのような道行を経てそこに来たか知らない人は多いだろう。この本はASEANの中での差異も取り上げながら、 簡潔にスペイン植民地時代から歴史も抑えてあり、 概要をとらえるのにとてもよく…
なんか、この人ナチュラルにマウンティングしてきて厄介なんですけど。ただ、マーケットとして成熟を極めていなくても 多様な広がり方をしていて、何がどう動いているのか なかなか見えてこない現代日本アートの切り口として 筆者が提示しているものには説得…
この人はITなどという言葉で呼ばれる前から この業界にいる人ですが、正直、僕には全然合わない。AIの知性というものに限界があるのだから、 万能であるかのように思ってはいけない、 という主張それ自体は受け入れましょう。というよりも、それはむしろ当た…
副題には一獲千金の夢と南洋進出とある。アホウドリが儲かるとは、どういうことか。 なんでもアホウドリは警戒心が弱いので特別な道具が無くても ひたすら撲殺で捕まえられるらしく、それによって羽毛を輸出していたらしい。明治の初頭から羽毛の輸出はそれ…
シュメル神話についての予備知識はまったくないが おとぎ話の詰め合わせとしてまずは読ませてもらえる。ギルガメシュと言えばビッグブリッジの死闘か 怪しげな深夜番組かと思っていましたが、ここで出てくる 英雄の名前だったのですね。半神半人の英雄は神話…
とある詩の出版社として短い間に印象を残した個人の肖像です。 著者が古書店主でもあり、装丁や書誌情報の流れは 網羅的でツボを押さえており、図版も充実していて それを眺めるだけでも楽しい。ただし、後書きがズルすぎる。表には出なかった人だから直接に…
これは本書の後書きにも書かれているが、 いまだまとまり切ってないまま研究ノートを提示されたような本だ。とは言っても、新書ならそういうことがむしろ挑戦として許されるのだから 向いてる方向さえ意識できていれば問題はなかろう。そして、この本はケガ…
久しぶりに名前を見かけたので手に取った。 思えばこの辺の気楽なエッセイ本は 椎名誠、原田宗典、とならんで僕が本を定期的に読み飽きた時に それでも完全に文字から落ちないためのセーフティネットみたいにあったわけで つまるところ、ちょっと疲れていた…
今、かなり荒波にもまれている小売、流通業界についての分析だ。 サービスにおいての同時性を排することで 宅配の形が変わるということを言っているが、 正味なところ「同時性」という言葉の定義は甘い。 「時間価値」も何を指しているかはだいぶ恣意的にな…
将棋の名人を破ったポナンザの製作者が書いたものだが かなり読みやすく整理されている。まず、コンピュータは 記憶と簡単な計算しかできない、という 前提から入っているのもいい。 しっかり初心者の視点を押さえてくれている。自分より優れたものを生み出…
昭和軽薄体の母体になっているような文章で書かれた ガッチガチの王道ラブコメで今更驚くようなことは特にございません。ただ、このサラリーマン社会と家社会の 濃厚な昭和感は久しぶりに感じたもので もはや資料的な価値があるとすら言えると思います。ご都…
戦争が始まってしまった理由というのには興味がある。人を殺す許可を互いに出すのが戦争であり それは端的に倫理的ではない。 それに値する何かがあると考えてするのか、 倫理などというのは糞の役にも立たないのか。さて、本書は言わずと知れたアヘン戦争で…
古い本なので現状の話にはならない。 ただ、それでも読むに値する。どのように差別が起こって どのように維持されていくのかのひとつのケーススタディ。差別は制度と社会的規範によるところが大きいだろうが 個別の差別構造は歴史的なものと分かち難くある。…
経理について経営の視点で抑えるべきことをまとめた本である。細かい仕訳の実務にはさほど役には立たないだろうけれど 数字の説明をする人間からしたらどのように説明すると 分かってもらえるだろうかという点では勉強になる。古い本なので最新のテクニック…
正直に言って「七緒のために」は星4つで、傑作ですが、 後半の「水の花火」はいかにも習作であって 前のがあるから読めるという体なので 本全体としてはやはり星3つにせざるを得ない。最高でも星4つなのは 丁寧すぎて繊細すぎるというあたりで 手癖と言うほ…
英語の拡散とその需要のされ方についての通史である。紛れもなく帝国的な広がり方と言えるし、 もしかすると帝国主義とは言語の不均衡な浸透を言うのではないかとも思える。しかし、当然軍事的な侵略のみで言語の浸透は起きない。 当該地方の積極的な受け入…
それぞれの会計基準について、 会社法との差異や国際会計基準の流れなどをわかりやすく解説してくれる。ただし、この著者の方の見方というものがしっかり出ているので 初学者としてはどこまで採用すべきかは他の本も読むべきかと言う気もする。 ただ、この本…
軽いエッセイはいいもんだ。 中身のない会話でも楽しくできるのは そこにヒューモアがあればこそだと思う。そしてこの伊丹十三という青年は年頃らしい 高潔さをもって世界を観察している。 本当によいものが世の中には存在するに違いないという期待と、少し…
なるほどこうやって終わらせるか。 あくまで絵巻物であり、叙事詩として描いたのだから こうやってもよいだろう。共産党時代は内戦や戦争の頃に比べれば 死ににくなったかもしれないが毀誉褒貶の激しさは変わらない。主人公もその荒波の中で、 揺れ動いた中…
幅広く神々を取り扱っているが 少々散漫な印象的はあるかもしれない。最初は言葉のつながりから語彙にイメージを与えていき。 中盤では歴史的な趨勢をおさえながら 神や霊的なものがどのような意味を持っていたか見せる。 終盤では実地の取材に即して展開す…
一貫して中小企業の経営者の視点をとっており、シンプルで分かりやすい断章形式の本です。 中小企業とは経営資源に余裕のない会社と思ってもらえば差し支えはないでしょう。 そういう会社では特にコミットメントを求めないと すぐにガタガタになってしまうわ…
専門書ではありますが、これ単独できちんと読めます。 いい入門書はその分野の意義と概観をどう押さえるかにかかってます。 その点、序論から紙幅を40pに渡って割いて、 租税法の意義に始まり歴史的過程を見せてくれていて 初心者としてとても助かりました。…
お仕事ものと推理サスペンスのごく軽いレジャー本ですね。 比較的細かく脚注が入るのはお仕事ものにはありがちで、 かつありがたいものですが、動物以外のネタも多いので もしかして作者はそこまで動物に入れ込んでないのではないでしょうか。 とはいえ、軽…
ノーベル賞と聞いて身構えて読んでた感はあるけれど、 割とオーソドックスな小説だと思う。 上巻では日中戦争の流れを濃く写しとりながら 7人の姉たちのそれぞれの半生を見せていく。 僕は細雪を思い起こしていた。あんな絢爛な舞台ではないが、地元の有力な…
引き続き二本の漫画の話をする。「好奇心は女子高生を殺す」(以下、「好奇心」)「ササミは心配中毒」 (以下、「心配中毒」) これらが男子高校生になるとどうなるか。 前編では年齢を調整変数に考えて見た。 その時はドラマが成立しなくなったり 読者の受…
漫画は言うまでもなく記号だ。 いかに写実的なタッチであったとしても、 精密な記号でしかない。 現実の何かを指し示すというのではない。 私たちがイメージしている何かを呼び出すためのボタンである という意味合いで記号だ。 *** 脱線 ***東君の「…