ヨモジジ(freaks ver.)

本と雑貨と音楽と、街歩きが好きなオッサン。1981年生まれの珈琲難民が好き放題に語る。レビューのためのブログ。

「財布のつぶやき」著:群ようこ

久しぶりに名前を見かけたので手に取った。
思えばこの辺の気楽なエッセイ本は
椎名誠原田宗典、とならんで僕が本を定期的に読み飽きた時に
それでも完全に文字から落ちないためのセーフティネットみたいにあったわけで
つまるところ、ちょっと疲れていたし手に取った。

開けてみれば期待を裏切らないお気楽ぶりで
けなすのではないけれど、いい具合に頭がよろしくない。

とことん直感的で反射的な言葉の連なりだけれど
裏表なくてあっさりしているので、それがこの人のいいところだ。

まぁ、しかし、ご家族の不満は洒落にならなくなるから
愚痴にするのはよしたほうがいいかな。
作家ならもう少しこじれて問題になってから書いた方がいい
というのは僕が性悪すぎるんだろう。

面白いおばさんなので長生きしますように。

財布のつぶやき      (角川文庫)

財布のつぶやき     (角川文庫)

ホームレスのおじさんがにこにこして近づいてきて、無言で私のコートを撫で、またにこにこしながら去っていったことがあった。私はびっくりして立ちつくしていたのだが、気に入って買ったもので、
「おじさんもこのコートを見て、触ってみたくなったのに違いない」
と嬉しかった。(p.58)

このオプティミスティックを通り越した感じ、すごいよね。

組み立て式のダイニングテーブルの金属製の脚がどうしても気になってきたので、木製の脚のみを購入しようと探してみた。メープル材の天板にぴったり合う色ではなくても、私の短い足に合わせた座面の低い椅子のために、脚の長さが短めのものを探した。天然木でちょうどいいものを見つけ、早速購入した。すぐに脚は届き、一人で天板をはずし、購入した脚の上にのせた。私のイメージでは、今までの金属と木といったモダンなタイプではなく、木製の素朴なテーブルができあがるはずだった。ところがただ高さを低く、木製の脚にしただけなのに、デンマーク製の天板なのに、シンプルな形の脚なのに、テーブルがおいてある場所の雰囲気が、一気に居酒屋になってしまったのであった。(p.126)

どうしてうまく行くと思ってしまったのか。
自分で脚だけ変えるとかハードル高すぎることを果敢にやってものの見事に失敗する。
この人の時代にYouTubeがあれば一角のチャンネル持ちになったであろう。