「無為の共同体」J=L・ナンシー
最後に訳者がかなり丁寧に取り出してくれるように、
共同体を全体性に回収せず、共同性のまま思考する論考だ。
それは共同性の限界を探る試みである。
少し前に読んだデリダの「死を与える」にも接するような部分があり、
それは限界の典型としての死であり、無防備に捧げられたもののことだが、
両者ともにほぼ同じ時代の論考であるところに、世紀末の気分を見ることができる。
いや、それは軽く言い過ぎで、切迫した未来への恐怖なのだと思う。
無為の共同体の「無為」はこの場合
「捧げる」よりも前にすでに「捧げられている」ような、
営み以前に訪れている共同性を呼び込むための形容詞であり、
ナンシーはそれを灯し火に細く狭い道を粘り強く歩いた。
この灯はかすかであっても見失わないようにしなければ
ヒューマニズムは道徳へと堕落するだろう。
- 作者: ジャン=リュックナンシー,西谷修,安原伸一朗
- 出版社/メーカー: 以文社
- 発売日: 2001/06/15
- メディア: 単行本
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