「フィリピン」著:井出穣治
ドゥアルテ大統領で悪目立ちをしてしまった感はあるものの
しかし、どのような道行を経てそこに来たか知らない人は多いだろう。
この本はASEANの中での差異も取り上げながら、
簡潔にスペイン植民地時代から歴史も抑えてあり、
概要をとらえるのにとてもよくまとめられた本だ。
名目GDPは3000億ドル弱でASEANでもトップ集団ではないが
人口は1億を超えて2番手、さらに平均年齢25才という人口動態の特徴がある。
働き盛りがこれからバンバン増えていくという爆発力を秘めているわけだ。
今、日本とフィリピンの関係は悪くはないと思われるが
第二次世界大戦時には激戦のあった場所も多くあって、
日本への感情は穏やかでない時期もあった。
(以前読んだマッカーサーの回顧録でも
互いに大きな被害が出た戦いであったことがよくわかる。)
それがどのようにして、今フラットなところまでこれたか
改めて見ておくことは価値のあることかとも思う。
- 作者: 井出穣治
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2017/02/19
- メディア: 新書
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多数決原理がうまく機能するためには、国の大きな方向性などの根幹部分について、大半の国民の間である種の暗黙の合意が成立していることが望ましい。そうでなければ、対局の判断のたびに国民の分断が引き起こされる危険性が増す。フィリピンの場合は、半ば固定化された格差の存在により、この暗黙の合意の形成が必ずしも容易ではない。(p.159)