『マンゴー通り、ときどきさよなら』著:サンドラ・シスネロス 訳:くぼたのぞみ
移民の集まるアメリカの街。
いわゆる貧困の問題や、その中でもさらに皺寄せが来てしまう女性の問題、
ということに触れつつも重く地面に縛りつけられるよりは
スキップしながら通りを走り抜けるような軽やかさがある。
これはこれである種のステレオタイプの再生産に違いないだろうけれど
このステレオタイプは文字に書き起こされなかった類のものでもあって、
社会をそのままに受け入れつつも、納得したわけではない少女の立ち位置がこのお話の核だろう。
だからあれこれの人の話が出てくるけれども
主人公であるところのエスペランサはレンズのように機能していて、
本人の像ははっきりとしないことも多い。
それが、時折自分を覗き込むと、
貧困や女性問題とはまた別の普遍的な問題にリンクしていく。
こっからどこ行こうってね。
(Where do we go from here.ってジャミロクワイの曲にあった気がするけど、あれ好きだったな)
楽しい気持ちで読める本だと思います。
ネニーとわたしは、ぱっと見ただけでは姉妹には見えない。家族全員が棒付きのアイスキャンディーみたいなぶあつい唇をしているレイチェルとルーシーなら、すぐに姉妹だってわかるのに。でもネニーとわたしは見かけよりずっと似ている。たとえば笑い方。レイチェルとルーシーの家族はみんな、アイスクリーム売りの鈴みたいに、はにかんだようにクスクス笑うけど、わたしたちはお皿の山がガシャんと割れてびっくりしたときみたいに、いきなり大声で笑う。ほかにもあるけど、うまく説明できない。(p30)
ほんとうのことを伝えようとしているのが分かる文章だと思う。これは美点だ。