ヨモジジ(freaks ver.)

本と雑貨と音楽と、街歩きが好きなオッサン。1981年生まれの珈琲難民が好き放題に語る。レビューのためのブログ。

「正解は一つじゃない 子育てする動物たち」齋藤慈子ほか編

動物学者たちによる、それぞれの動物の子育てを紹介する本。
もっとも小さいものはアリから、大きなものはゴリラまで19もの種類の生き物たちが出てくる。

よい子育てについて人の親は悩むが
「よい」とは何かを相対化するための試みでもある。

当然、動物種によって子育ての仕方が違うのはそうなのだが
同じ種の中でも幅があることがあるのも興味深い。
子育ての方針というのは、それぞれの環境や状況の中でその都度選び直されるものだということが分かる。

各動物たちについての論説を専門の研究者が
ひとつずつ執筆するその終わりに自分の子育てについても語ってもらうコラムがあり
これもなかなか面白い。

動物の中ではどうやっても過保護に見える「ヒト」の子育てではあるが
これはこれで、少産少子の種族の選択としては正しいものである。
結局、よそはよそということになってしまうのではあるが、
長期の子育てである以上、途中での方針変更だって十分に考えられるのがヒトの子育てでもあるだろう。

病気で余命三ヶ月の人が三ヶ月後に亡くなるのは「善い」ことでしょうか。自然であることとイコール道徳的に正しいとしてしまうのは、いささか安直であることがわかります。
 さまざまな子育ての例を知って、「こんなやり方があるのか!」「こんな手抜きもあるのか!」と驚いてほしい。そう私たちは考えています。しかしその時に、「この動物は道徳的に劣っている」とか、逆に「人間より道徳的だ」といった価値判断に飛びついてしまわないようにも、お願いしたいのです。(p.9)

科学者としてしごく真っ当な表明ではあるが、子育て本となるとこういった点はより慎重さが求められるゆえの序論ですね。

宿主がちょうど卵を産んでいる時期に巣の周りでカッコウの姿を見ると、巣の中の卵にも注意するようになり、少しでもあやしい卵は巣から捨てるようになります。宿主にとっては巣の周りでカッコウの姿を見たということは、托卵されている可能性が高いことを意味するからです。ジュウイチやカッコウが托卵する際、宿主の巣に滞在するのは一〇秒程度ですが、これは文字通り、宿主にばれないようにこっそり卵を産み込むためです。(p.264-265)

仁義なき托卵バトルなどもあり。