ヨモジジ(freaks ver.)

本と雑貨と音楽と、街歩きが好きなオッサン。1981年生まれの珈琲難民が好き放題に語る。レビューのためのブログ。

「日本の税金」第3版 著:三木義一

日本の税の仕組みをざっくりとまとめて見るにはちょうどいい本だ。

誰のための税金というところからはじまり
所得税法人税、消費税とメジャーなところだけでなく
相続税、酒税等物品税、地方税もふれていく。

とかく日本は源泉所得税と年末調整で大半の人が終わってしまうので
どのように、あるいはどのような意図で徴税されているかが見えにくい。

それでも、税金が本来的には国民の付託を受けた行政が
国民のために使っていくという前提で
国民の了承のもと徴税されるという建て付けになっている以上
ただ受け身で差し出すのは違うし、個人的に節税に励むと言うのも違う。

税はそれぞれのお金の動きを特定の方向に誘導することがある。
それだけで決まると言うこともなくても、家族の形についてだとか
雇用関係のあり方だとか、あるいは国際的な取引の形について。

どのような社会を望むかを
社会の構成員が考えることのできる制度の中にいる我々にとって
税金というのもその望ましい社会に対する一助になる。
こうした著者の問題意識がよく分かる一冊だ。

人的控除の中に配偶者控除がある。配偶者控除はその名前からして、日本の伝統的女性像である「内助の功」を税法上優遇したものであるかのような主張があるが、それは誤解である。(中略)
まず専業主婦を前提に考えてほしい。専業主婦は、いくら家事労働に専念しても、そこから所得は生まれない。つまり無所得者である。そうすると、無所得者には、国家は生活保障をしなければならないはずだが、婚姻中はお互いに扶助義務があるので、これを前提に国は生活保護を支給しない。そこで、婚姻中は所得のある者がない方の「健康で文化的な最低限度の生活」のための支出を負担することになる。(p.38-39)

基礎控除が基本で、それを所得のある方に移し替えたという作りですね。
だから、パートで働いている時に基礎控除があって配偶者控除があるというのは
実は二重に控除していて政策上の配慮ということになる。

ビールが発泡酒という類似品を生み出したのは、ビールの税率が異常に高かったからである。(中略)
一九五〇年代の大蔵省(現・財務省)関係者の解説(中略)によれば、ビールはその大半が家庭以外の料理店で消費されており、そうした料理店に出入りできる層は社会的に裕福な層であることが高税率の根拠とされてきた。(p.169-171)

時代の変化を無視して税率が高かったビール。
最近はようやく少し下がる方向で調整が入りつつありますが、それでも他のものより高そう。

ひとつひとつ見ていくと面白いです。