ヨモジジ(freaks ver.)

本と雑貨と音楽と、街歩きが好きなオッサン。1981年生まれの珈琲難民が好き放題に語る。レビューのためのブログ。

「経営危機時の会計処理 レオパレス21は難局をどう乗り越えたか」著:日野原克巳

レオパレスは今も全国に住宅賃貸のネットワークを展開しているが
2018年に施工内容についての不備が判明してその修繕や補償などをしなければいけない状況に追い込まれた。
それは単発のものではなく、調査をするにつれ、類似の事例も発覚するなど
かなりの負担をもたらすものだった。

本書は、その当時にレオパレス経理部にいた企業会計士が
どのように課題を受け止め対応していったかを記録したものである。

あくまで会計上の課題を中心なのでそこまで


ドラスティックなものではないかもしれないが
決算で「継続企業に前提に関する注記(GC注記)」を書かなければいけないというのは
読んでるこちらも胃がキリキリしそうだ。

投資家に正当に判断してもらうためには必要だからとはいえ
「コレコレの事由で潰れるかもしれない可能性がありますよ」なんてできれば書きたくはない。
しかし、同時にそういうところをきちんと抑えるからこそ
リスクを抑えながらどのように復帰していくかの道筋が見えてくる。

また、この決算書ならびに有価証券報告書は外部の会計監査もありその中でのやり取りも描かれる。
全般的に淡白な書きぶりではあるが、著者の実直な仕事ぶりが表れているようでもある。
一般向けの話題ではないがあまり遭遇したくなく、かつ貴重な事例ではあると思われるので
会計人にはよいかもしれない。

資金繰りを含めて、会社の危機的な状況を詳らかにすることにより、会社全体でそのような状況を共有することこそが、資金繰り対策を確実に遂行するにあたって、極めて有効な手段と考えられた。しかしながら、危機感をあおってしまうことで、かえって従業員のやる気を削いでしまい、会社の雰囲気まで悪くしてしまうリスクもあり、痛し痒しの状況であった。(p.104)

こういうジレンマも特有のものだが、やはりトラブルというのは顕在化してからの対応は難しくなりがちだ。