ヨモジジ(freaks ver.)

本と雑貨と音楽と、街歩きが好きなオッサン。1981年生まれの珈琲難民が好き放題に語る。レビューのためのブログ。

「人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか」編:玄田有史

玄田さんはあくまで編者としての立ち位置だが、
20人以上の報告をまとめて総括もしてくれていて
投げっぱなしのアンソロジーにしてないのがありがたい。

それぞれに重なる領域もありつつも、
色々な切り口がこの問題に関わっていることが分かる。

業界における規制の状況であったり、
人材の能力開発投資の抑制であったり、
評価制度の変更であったり、
あるいは人口動態の問題であったり、
はたまた、実際にはあがっている面もあるとする研究もあるなど本当に様々だ。

ただ、こうやって列挙していって整理してくことで
一つずつに対応することができれば、状況の改善につなげられる可能性があるわけなので
こういった研究が政策などに活かされることを願いたいところだ。

そして、これを読んでいると
賃金の上がってない状況があるとしても、
あくまで長い調整局面にあると感じられて、思ったよりポジティブに受け止められた。
課題の明確化ってそういう効果があるな。まぁ、容易な課題でないのは確かだけれど。

就職氷河期と言われる時期に新卒を迎えた世代の人々は、上の世代に比べて、同じ年齢期の給与額が明らかに減っていることをみた。(中略)現在、働き盛りの世代にあって、人口サイズも大きい彼らの大幅な賃金減少が、人手不足なのに賃金が全体的に上がらない一つの背景となっている。(p.66)

俺、俺。

少子高齢化に伴い、勤労者世帯全体に占める世帯主が60歳以上の割合は、趨勢的に上昇し続けてきた。相対的に収入水準の低い高齢勤労者世帯の増加は、勤労者世帯全体の平均収入の下押し圧力となっている。
 また、「世帯主の勤め先収入(雇用主負担を含む)」の2012年以降の伸びは、社会保険料率の毎年の引き上げが大きく寄与しており、これにより雇用者が受け取る賃金の上昇の余地が奪われていると考えられる。(p.149)

家計調査から構成要素ごとの寄与度の分析を行ったもの。シビアだね。
沈む前に次の足を出す。