「一発屋芸人列伝」著:山田ルイ53世
ネタ見せ番組というのはなんというか、
バラエティが行き詰まった時に代わりの突破口として現れ
一発屋芸人はそれとともに社会に溢れ出た。
売れるべくして売れたというよりは
売るものがない中で、探し当てた一つの水脈が噴出したという形で
社会構造というか、マーケティング的な情勢の中で巻き起こった現象に思える。
この本は、著者自身一発屋芸人として、一発屋芸人にインタビューしている。
こういう形での語りと聴き取りはほっておけば消えてしまっただろうから
とてもよい企画だと思う。
本人の努力もなければそもそも板の上に立てないのだから、
みんな頑張っている。それでも、前述の通りの印象から
社会現象に巻き込まれてしまった人のようにも見える。
それが、このミクロな聴き取りでは非常に多様で自由なあり方が見える。
最終的にはやはり翻弄されてはいるんだけれど、
どっこいそれでも生きている、という感じのするこの
一冊はとても民衆的な芸能風俗を描いている。
少々ベタなツッコミも多いが、その辺も含めて、
軽さが翻弄される僕ら自信を少し楽にしてくれる気がする。
- 作者: 山田ルイ53世
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2018/05/31
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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「一発屋の人なら分かると思うんですけど……」
道連れにしたいのか、会話の合間に時折差し込む波田。
(共感したら終わりだ!)(p.139)
ギター侍とのサスペンス溢れる会話。
「失敗して、『見えてしまった!あちゃー』……やるのは簡単ですけど、それをやると僕の場合、先がない気がする。どれだけ見せずに色々遊べるか……そこを突き詰めたい」
頑固な職人、あるいはアスリートと話しているような錯覚を覚え、無意識に背筋が伸びる。(p.184)
とにかく明るい安村の話だが、全般的にそれぞれのプロ意識が垣間見える。
お仕事本としては外せないやつです。