ヨモジジ(freaks ver.)

本と雑貨と音楽と、街歩きが好きなオッサン。1981年生まれの珈琲難民が好き放題に語る。レビューのためのブログ。

2018-01-01から1年間の記事一覧

「声と現象」著:ジャック・デリダ

さすがにしんどいので寝かせながら読んでた。フッサールをデリダが読み解くという体ではあるものの、 それは解くのではなく、 フッサールの紡いだ糸をさらに編み込んで行くような身振りでもある。現象学的な振る舞いに基づいて還元しながらも 不可分な二重性…

「寿歌」作:北村想、演出:宮城聰

初演1979年の作品の再演である。 何を今更という感覚はあるかもしれないが、 シェイクスピアをやれるのなら大した問題でもないか。20年以上前になるが、中学校くらいに 北村想のプロジェクト・ナビをよく観に行っていた。大げさではったりの効いたチープさや…

「『その日暮らし』の人類学」著:小川さやか

アフリカから中国への出稼ぎ市場というものがあるとは知らなかった。 文化人類学者としてどっぷり入り込みながらの フィールドワークレポートである。資本主義は流動性を求めていくものだが、 その極限的な姿の一つとしてこの本のキーワード「その日暮らし」…

「消費大陸アジア」著:川端基夫

アジアと言っても様々な国がありそれぞれに流行り廃りがある。 本書はアジア各国へ進出した企業の成功と失敗の事例を見ながら それをどのように捉えるかという視点を提供してくれる。内容としては悪くないんだが、 少々、アカデミズム内の術語についての解説…

「異邦の香り」著:野崎歓

これ、ネットレビューとしてはどうかと思いますが、 装丁がとてもよろしくてですね、開く前から乳香の香りがするような作りなんですよ。 (嗅いだことないけど)土煙と甘やかさを感じさせる象牙色の表紙に金箔押しの優美な英字、 端正なタイトル、ついで(失…

「パロール・ドネ」著:クロード・レヴィ=ストロース、訳:中沢新一

構造主義の発展を支えた人類学者の講義録である。ここにある内容は正直に言って僕には専門的すぎて もう少し周辺テキストを読まなければ理解をしきるのは難しかった。しかし、それは言葉を弄するといった類のものではない。 どれも具体的な物事に結びついた…

「低予算でもなぜ強い?」著:戸塚啓

ベルマーレはJリーグが始まった時に「ベルマーレ平塚」という名前だったが 気づけば「湘南ベルマーレ」と名前を変えていた。色々大変なんだろうと思ったが、この色々がなんなのかはよく考えずにいた。 別に何かのマンガの引きでもないので、それが自分の生活…

「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」著:新井紀子

シンギュラリティはこないけど、 全体的に2段階下くらいの水準で人類はAIに追いやられるという話。どれくらい教科書が読めないのかというのは 割と衝撃的な数値が出ていますが、 ここの間違え方はAIと違うようにできている気がします。相手の言いたいことを…

「都市は人なり」著:Chim↑Pom

やってやった、という手応えだけがある。 面白い本だ。美しさよりも、もひとつ前の、面白がることに彼らはフォーカスしてる。 人が集まりより多く面白がられるその煌めきが 美しくあるのかもしれず、そのようなものであれば 僕らの日常も十分に美しいのであ…

「武器としての会計思考力」著:矢部謙介

会計を専門にしてない人でも道具として使えるような なかなかよいガイドだと思う。語句の説明の丁寧さもさることながら 実際の財務諸表を業種ごとに見ながら それが何を意味するのか、実践的に解説もしてくれる。最終的にKPIへの落とし込みの話までしている…

「求心力」著:平尾誠二

こちらの本はあまりオススメできない。 「勝者のシステム」のときにあくまで体験から帰納的に話をすすめていたのが 先に答えを持ったところから書いてしまっている。そしてその答え合わせにこのような経験があった、というが それは順番が逆なのだ。ただ、集…

「スペクタクルの社会」著:ギー・ドゥボール 訳:木下 誠

戦うために戦う文章の連なりであり、 現象のまま、道連れに消え去ろうとする試みだ。脱構築へと連なる流れの実践的な潮流がここにはありそうだ。 消費的なシュミラークルのお話かと思うと、それよりも より広い視野のある本ではある。ただ、戦う衝動が強すぎ…

「理不尽な進化」著:吉川浩満

これは進化論についての本ではありません。 科学と一般的な理解との隔たりについて丁寧に書かれたものです。と、言ってしまうには進化論についての言及はしっかりしている。 この具体的なコミットメントがあってこそ、この人の立論は意味を成すのだから 当然…

「ゴリオ爺さん」著:バルザック

パリの下宿にやってきた田舎青年が社交界でもまれる変則めぞん一刻です。まぁ、しかしあれよりだいぶ下世話か。 泣き落としにつぐ泣き落としがあらわれるけれども みんなだいたい自分勝手すぎる。自分のこづかいが少ないからと言って カジノで儲けてきてと頼…

「新しい中世」著:田中明彦

世界システム論というのは大仰でやや胡散臭い。 しかし、その印象を超えて説得力のある論を展開してくれた。何より本書の初出は1996年で20年も前であるにも関わらず 今もその射程が先を照らしているというのが力強い。ここで想定されている「新しい中世」の…

「物語論 基礎と応用」著:橋本陽介

完全な初級者向けとして書かれているけれども 用例の紹介の豊富さと、扱う理論の幅の広さは 今あるもののなかでは随一と言っていいのではないだろうか。形態論、文体、構文、ナラティブの問題、展開などなど、 物語にまつわるものでいったら、あとは読者論く…

「勝者のシステム」著:平尾誠二

ラグビーの日本代表の選手であり、監督であった人だが、 個人的に言えば僕の母校の数少ない事前イメージを伝えてくれた人だ。僕が大学に入った時には特に強かったわけではないので 余計に「平尾誠二」という個人が際立って強かったのだろうと思う。2016年に…

2018年の計画1

ウェブ漫画巡りをやめないと時間がない。→辞めよう。でも、もう少しお返しをしたいので、新都社の作品で 完結していない作品かつ一年以内に更新されているものを対象にレビューをします。あくまでオススメであって、 僕の好みとも若干のズレがあります。選外…